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地上10センチから世界を征する 剛腕の左のアンダースロー  作者: 伊藤ライリー
アンダースロー卒業後の橘周
188/216

第188話:弟の橘壮太郎の30歳シーズンもやっぱりすごかった その1

橘周の弟である橘壮太郎は、昨年29歳のシーズン、ヤンキースで28勝1敗のとんでもない成績を収めて、橘周に続いて、伝説級のピッチャーになった。兄以来のMVPとサイヤングのダブル受賞も果たした。


奪三振では兄のシーズン記録には遠く及ばなかったものの、1試合22奪三振のメジャー新記録を達成した。


兄が浪人生活から日本でプロ野球選手になった、30歳の今シーズンは、壮太郎はワールドシリーズ制覇を目標にスタートをきった。


球種は、160キロ超えのストレートと、以前から得意だった変化球ナックルカーブ、ツーシーム、カットボール、チェンジアップに加えて、兄譲りの手首を捻らないシュート(名投手西本聖のシュート)と握りの浅い高速スプリットを操る。手首を捻るシンカーと握りが深いスプリット(フォーク)は、あまり自分に合わないとの判断で、今は封印している。


試合ごと、イニングごと、打者ごとに投げる変化球を変えながら、的を絞らせない投球ができるのは、兄の橘周と同等で、他のピッチャーにはマネができない完成度である。


ヤンキースの固い守備と強力な攻撃陣をバックに着実に勝ち星を重ねていく。

オールスター戦までの前半戦を13勝2敗のハーラーダービートップ。


===

そして、今シーズンから新たな日本人が加わった。

ジャイアンツで、トリプルスリー→盗塁王を加えた史上初の四冠王→40-40達成→三冠王と60本塁打を記録したスイッチヒッター桜井淳25歳である。アメリカでもスイッチヒッターのレジェンドである、ミッキーマントルの再来かもと言われている。


しかし、序盤はやや苦労した。特に150キロ代中盤のツーシームやスプリットとナックルカーブといった、日本ではあまり見慣れない高速の変化球。それとやはりためがない投球フォームにやや戸惑った。


それでも、サードの守備面では安定度と強肩が評価されて、スタメンから外されることが少ない。オールスター戦前までの成績は、打率.298、ホームラン14本、打点55、盗塁13と期待は下回るものの、中軸として及第点の成績である。


さらにスイッチヒッターの長距離砲だから、変則フォームのピッチャーもどうにか対処できるというか、対処できそうなことが、首脳陣から重宝されていた。


しかし、オールスター戦には選ばれなかった。ちょっと悔しいが、前半戦を振り返りながら、時間をかけて分析し、練習で追い込み、後半戦の爆発に燃えていた。


果たして・・・後半戦2戦目に、その成果が表れた。

1打席目で右中間へ弾丸ライナーでフェンス直撃のツーベースで気分がスカッとした後、2打席目は、レフトへシンカーを流し打ちのホームラン。

3打席目は、今度はライトポール際へ125mの大きなツーランホームラン。

4打席目は、サウスポーのピッチャーを右打席で迎える。外角の速球に合わせてフルスイングするとバックスクリーン直撃の140m級の特大ツーランホームランとなった。


勢いは止まらない。翌日の試合でのこと。前日のホームラン3本で5番から4番に打順を上げた。

1打席目は警戒されて申告敬遠だったが、次の2打席目。

右ピッチャーのスライダーが真ん中に入る好球をフルスイングすると、右中間方向の場外ホームランとなった。飛距離145m強の超特大ホームラン。それもスリーランホームラン。


左打席で流し打ち、引っ張りのホームラン2本に、右打席で思い切り振り切ってのバックスクリーンへホームラン。これで今までのうっぷんを晴らすことができた。


2試合で、8打数7安打2四球4ホーマー10打点と活躍し、ヤンキースの連勝に貢献した。この2試合目は、橘壮太郎が勝利投手となり、14勝目を上げた。

試合後

橘壮太郎「昨日と今日で本格的に覚醒したな!日本の時の桜井淳だな」

桜井淳「はい、お待たせしました(笑)。ようやくスッキリしました」

橘壮太郎「これで3割、18ホーマー、60打点か?一気に3部門ともにチームトップクラスになったな?」

桜井淳「そうなんですかね。オールスターに選ばれなくて良かった(笑)。

    冷静に振り返って分析して、バッティング練習できましたので、

    良くなった感覚ありましたし。」

橘壮太郎「よーし、これでワールドシリーズに向けて死角が減ったな!」

桜井淳「えっ死角でしたか?俺って(笑)」



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