第172話:甲子園に凱旋した橘周が、ついに本領発揮!
ジャイアンツに復帰した橘周本人は、ここまで可もなく不可もなしの活躍と理解していた。周囲にはそこそこのインパクトを与えていたが、そろそろ爆発といきたいところ。
7試合目の甲子園でそれは起こった。
1打席目は、右打席で強振し、レフトポール際に弾丸ライナーで1号ホームラン。パワーがあるとこをを見せつけると、2打席目は、同じく右打席で右中間へ流してスリーベース。
関西でのスリーベースヒットは久しぶりであり、今でも若手のスピードスターのように走れることに、皆が驚いていた。
3打席目フォアボールの後は、連続盗塁でまた甲子園を沸かせたが、第4打席が圧巻だった。左打席で、バックスクリーン直撃の特大スリーランホームランを打って見せたのだ。
4打数4安打6打点1四球2盗塁と、やっとバッター橘周の本領発揮だ。
ピッチャーが本業の時は、バッティング練習や相手投手の分析にそれほど時間もかけられなかったが、今では充分にできる。しかも40歳にもなり、いつケガで引退しても構わない覚悟があるから、リミッター外して全力で行けるのが大きい。
この試合、守備でもライト→レフト→ファーストと守り、ファインプレーも2つ。特に甲子園の芝を利用したスライディングキャッチは、かなりの長さを滑って、好捕するプロの技であった。
そう、2回目のジャイアンツで、ついに思い切り躍動した。
これにはタイガースファンもヤジを忘れて、褒めたたえるしか無かった(笑)。
試合後、西宮市の宿泊先のホテルで食事会が行われた。
橘周に習って、皆ノンアルかアルコール1杯のみの真面目モードだ。
途中ジャイアンツの生え抜きスター選手である、サード山岸、ショート横山と話がはずんだ。
山岸「周さん、おみそれしました。正直40歳でどこまでやれるかと半信半疑
だったのですが、大変失礼しました(笑)」
横山「小さい頃から見てたスーパースターと一緒にプレーして、しかも
目の前でとんでもない活躍するなんて、ホント信じられないです」
橘周「やっと今日ジャイアンツの一員にまたなれた気がしたよ(笑)。
でも今日だけ一瞬花火が上がったってことにならないよう、
ちゃんと寝てまた準備だね」
山岸「なるほどー!こんなとんでもない活躍した後でも、ちゃんと睡眠
取るんですね。俺なら朝まで興奮して眠れないかも」
橘周「親から、達成感に浸ったら、スポーツ選手はそこから衰えるぞって
何回も脅されたんだよね(笑)。シャワー浴びながら『やったあ!』
って一言叫んだらそれで終わりという癖を若い頃に付けてさ」
横山「えーー。そうなんですね。俺もそうします。それを守って睡眠を
しっかり取ると俺でもメジャー行けますかね?」
橘周「まあそれ以外でも食事やトレーニング方法とか、俺の知っている
ことはどんどん情報提供するよ。後、失敗した時もシャワーで
『クソー』って叫んで、以上終わりってするのも大事(笑)」
翌日の試合、橘周は、初めて3番打者としてクリーンナップに抜粋された。




