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地上10センチから世界を征する 剛腕の左のアンダースロー  作者: 伊藤ライリー
アンダースロー卒業後の橘周
168/216

第168話:ここから締めていくぞ!

愛媛マンダリンパイレーツとして、東京ドームに凱旋し、大活躍した橘周。


試合後は、橘周がジャイアンツ時代のチームメイト中心に、結婚祝いの会を催してくれた。まだ現役の選手は試合の時間なので、引退した人ばかりだけど、100人近く集まった。


しかし、お目当てが妻であるアクションスターのレイラ・ストーム という人が多い。まあ仕方ない(笑)。


映像を流すコーナーでは、数々の印象的なプレイが公開された。

・子供の頃のアメリカでの野球、バスケ、サッカー等でプレイする姿

・高校時代のダンスパフォーマンス

・大学時代の全国陸上大会決勝戦

・坊ちゃんスタジアムで行われた草野球大会で、左のアンダースロー全国

 初披露した時

・ジャイアンツ時代のピッチング、バッティングと、守備で外野フェンスに

 立って高くジャンプしてのホームランキャッチという伝説のプレイ

・WBCアメリカ戦での奪三振ショー

・ドジャース時代のパーフェクトゲームと2打席連続3ランホームラン

・ヤンキース時代のクローザーでの奪三振ショー

・映画出演、テレビ企画のアメフトやボクシング

・マスターズ陸上世界大会での200m銀メダル


合わせて、レイラ・ストームのこれまでのテレビ、映画、ネットフリックス出演場面の映像も流れた。



橘周は、心の底から楽しみ、幸せを感じていた。妻とともに元チームメイト達がこんなにも祝ってくれるなんて、なんてありがたいことだと。


翌日、妻はアメリカに帰路についた。


「さあ、浮かれるのはここまでだ。自分のためにも、チームの若手達のためにも、地に足を付けて練習と試合に臨まないといけない」


このことは、チーム関係者にも伝え、次の日からできる限り黙々と練習するようにした。打率が5割超えてはいるが、ここからはマークが厳しくなる中で、打率4割をキープしたい。


後は、守備練習にバリエーションを持たせて、捕球も、送球も、連携プレーも極めたい。外野の3つのポジションとファーストとピッチャーの連携プレーも全てレベルアップする。


幸いなことに、試合数が少ない四国アイランドリーグでは練習時間が多く取れる。坊ちゃんスタジアムや隣のマドンナ球場が使えない時は、開いているところを借りて練習を続けた。


ちょっとずるいのだけど、プロ野球OB達に臨時コーチやバッティングピッチャーとして短期契約もして、試合の無い日はとにかく練習に明け暮れた。


坊ちゃんスタジアムの横には、プールもあるし、ジョギングコースもあるし、特訓し放題だった。


そうして5月が終了した時点で、橘周の打率は、4割8分5厘と2位を1割以上も引き離し、圧倒的な首位打者に君臨している。ホームランも1位、打率2位、盗塁3位。


さらに最初は気分転換を兼ねてだった、サイドスローピッチャーとしての腕も上がっていた。145キロがコンスタントに出るようになり、変化球の精度も上がってきていたのだ。でもあくまでも野手中心でやっていく。ピッチャーとしては、チームが本当に必要とした時にリリーフで投げるだけだと。


橘周は、若干生真面目モードに変わっていたのだが、それでも相変わらず観客は、地方の独立リーグとは思えない数が毎試合押し寄せていた。



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