第144話:ワールドシリーズ最終戦の結末は!!
ヒーローは少し早めの出番となった。中3日でもあるし、体調は万全。
後藤と大田原の実況で見てみよう。
「こんな緊張の場面で出て来たか!楽しみだなあ」
「橘周は、緊張でおかしな投球したこと、新人の時にあったかなかったか
ぐらいですからね。凄い男です」
7番打者に対する
「シュート。向かい風でかなり沈みましたね。50cm以上。アンダースロー
で手首を捻らないシュートを投げてコントロールできるのは橘周だけ
ですね」
「こっちきてから投げだしたんだよな?」
「そうなんです。手首を捻るシンカーは負担が大きいので、途中で切り
替えたようなんです」
「インローのストレート。145キロ。向かい風のせいかもしれないですが、
去年よりストレートのスピードは落ちてるかもですね」
「37歳で無理な体勢で投げ続けてるから、仕方ないよな。でも低目は真横に
曲がるから捉えにくいのは確かだ」
3球目にアウトローへのツーシームでセカンドゴロ。
8番打者には、代打。強打者が登場した。
「1塁3塁でこの選手は怖いですね」
初球。ここで天下の宝刀ライジングストレート。空振り。
「おお、かなりホップしたぞ!」
「いやあロスまできて、これが見たかったんですよ。これ打つの無理
でしょう」
「向かい風だから、高めのキレのあるストレートが浮き上がる。下から
上方向に投げる橘周ならではだな」
「そうですね。地面スレスレから投げるアンダースローで、世界で唯一
垂れないストレートを投げるピッチャーだからこそですね」
その後シュートとライジングカッターで三球三振!
「ライジングカッターもえげつない。30cm以上浮き上がりましたね」
「ライジングストレートより遅くて、曲がり方も反対で、しかもストレート
より浮き上がる。漫画か!(笑)」
9回裏も当然そのまま橘周がマウンドへ。
「元々身体のスタミナはかなりあるからな。腰に爆弾抱えているだけだから」
「なんでも腰に負担が一番大きいパワーカーブはほぼ使ってないらしいです」
「いつまでこのフォームで投げられるかだなあ」
「橘周本人は、もういつ終わってもいいぐら、いいつも全力なんでしょうね」
浮き上がるストレート:ライジングストレートを中心に三振とファースト
フライで2アウト。
しかし、ツーアウトから珍しくフォアボール。
そうこのワールドシリーズ最大のライバルとなったライダー・ゴールドに
吸いよされるように。
ホームランなら同点のツーアウト1塁の場面で、MVP候補のゴールドが相手だ。
「これは最後の最後に痺れる展開になりましたね」
「こんな時でも橘周はワクワクしてるんじゃないか?」
「その当たりがバケモンなんですよね」
初球。ライジングストレートが20cmは浮き上がって空振り。
「おお。ここでまたギアを上げましたね。すごい!」
「ギアを上げても冷静なんだよな」
2球目。ライジングストレート連発でまたも空振り。
「あんなボール、バントでもしないと当たらんすよ」
3球目。外角へ真下に沈むシュート。なんとかバットに当ててファール。
「当てたか。さすがゴールド」
「さあ次はどうしますかね」
球場はもう歓声で誰の声も届かない大騒動だ。
運命の4球目。外角へ遠ざかる、ライジングストレート。空振り三振!!!
2年連続ワールドシリーズ制覇。
「やりましたあ!良かったあ。最後も三振。スーパースターをトップスター
がやっつけた」
「なんだそりゃ(笑)。やあいいもん見せてもらった」
「最後のボール、ホントに凄かったですね。真ん中から浮き上がりながら
外角一杯のコースに逃げていく。打てるバッターはこの世にいません」
MVPはオーティス。昨年の橘周のように圧倒的に活躍した選手はいなかったが、勝ち試合で3度活躍したオーティスが選ばれた。
橘周37歳のシーズンは無事終了した。




