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地上10センチから世界を征する 剛腕の左のアンダースロー  作者: 伊藤ライリー
ニューヨーク・ヤンキース編
141/216

第141話:ワールドシリーズ3戦目と4戦目は果たして・・・

ヤンキースタジアムでの第3戦は、ドジャースが大勝した。実に12-3。


ドジャースの主砲で若きスーパースター ライダー・ゴールドは、1本塁打3安打4打点と躍動した。


橘周にとっては、キャッチボールしただけの、ほぼ完全休養日となった。


「丸々2日間腕を休ませることができたので、これはこれで良かったと思うことにする」と若干の強がりも含めて前向きに考えるようにした。「明日から終わるまで全部投げるし、代打も代走もやる」と回りに宣言していた。


第4戦も、途中までリードされる展開。ここで橘周は、7回に代打で登場した。

だいぶ見慣れてきたとはいえ、クローザーが代打で出るのだから、毎回騒ぎになるww。


センター前タイムリーで歓声に応え、さらに快足を飛ばして同点のホームを踏んだ。特に2塁からのライト前ヒットで、ゴールド選手の肩と勝負しての同点ホームインだったので、ちょっとだけ、やり返した感じだ。


DHに入った橘周は、9回同点の場面でマウンドに上がった。


ゴールドへの対策は準備済だが、ランナーを出して迎えるのは嫌だったので、先頭バッターを全力に仕留めに行き、セカンドフライ。ここで、今ワールドシリーズで三度橘周 vs ゴールド。


1球目:外角低めへの遅いチェンジアップ。ボール

2球目:外角低めへのツーシーム。見送ってストライク

3球目:内角低めへのストレート。シュート回転でフロントドアになってストライク。


「さすがに攻め方を変えて来たか。流石だ。でも認められた証拠だな」とゴールド。


4球目:ライジングカッター。見送ってボール。カウント2-2。


「普通振るだろ!いいバッターになったもんだ」と橘周は、心の中だけで

 ニヤリ。


5球目:沈むシュートをインコースぎりぎり。空振り三振!!!


「よっしゃー。ゴールド、サヨナラ負けの屈辱を思い知ったか(笑)」と今度は本当にニヤリ。

「うまくインコース突かれた。ちくしょー次はまた打つ!」とゴールド。


しかし、橘周の活躍はまだ終わらなかった。9回2アウトナンナー無しからのバッターで登場。何かが起こりそうな雰囲気が球場に充満している。

ピッチャーはホームランを恐れて、フォアボール。


自分がホームに帰ればサヨナラ勝ちの場面。しかも盗塁禁止が解除されている。


実は37歳の今でもスピードはメジャー最速レベル。いや最速なのだ。

でも今シーズンもチーム方針で盗塁はわずか1。相手のクローザーもここにきて盗塁だけはさすがに無いだろうとの読み。


そんな雰囲気の中、2球目に橘周は楽々と盗塁を決めた。あまりに速くて、余裕のセーフだ。


これでドジャースは動揺し、ヤンキースタジアムには勝てそうな雰囲気に傾いた。


2塁上の橘周を警戒し過ぎたこともあり、センターオーバーの長打が生まれ、橘周は、サヨナラのホームを踏んだ。


大袈裟な表現をするなら、「正規のクローザーでありながら、バッターで走塁で守備で印象的な活躍をする歴史上唯一の選手」であることを、またしても証明して見せた。


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