第141話:ワールドシリーズ3戦目と4戦目は果たして・・・
ヤンキースタジアムでの第3戦は、ドジャースが大勝した。実に12-3。
ドジャースの主砲で若きスーパースター ライダー・ゴールドは、1本塁打3安打4打点と躍動した。
橘周にとっては、キャッチボールしただけの、ほぼ完全休養日となった。
「丸々2日間腕を休ませることができたので、これはこれで良かったと思うことにする」と若干の強がりも含めて前向きに考えるようにした。「明日から終わるまで全部投げるし、代打も代走もやる」と回りに宣言していた。
第4戦も、途中までリードされる展開。ここで橘周は、7回に代打で登場した。
だいぶ見慣れてきたとはいえ、クローザーが代打で出るのだから、毎回騒ぎになるww。
センター前タイムリーで歓声に応え、さらに快足を飛ばして同点のホームを踏んだ。特に2塁からのライト前ヒットで、ゴールド選手の肩と勝負しての同点ホームインだったので、ちょっとだけ、やり返した感じだ。
DHに入った橘周は、9回同点の場面でマウンドに上がった。
ゴールドへの対策は準備済だが、ランナーを出して迎えるのは嫌だったので、先頭バッターを全力に仕留めに行き、セカンドフライ。ここで、今ワールドシリーズで三度橘周 vs ゴールド。
1球目:外角低めへの遅いチェンジアップ。ボール
2球目:外角低めへのツーシーム。見送ってストライク
3球目:内角低めへのストレート。シュート回転でフロントドアになってストライク。
「さすがに攻め方を変えて来たか。流石だ。でも認められた証拠だな」とゴールド。
4球目:ライジングカッター。見送ってボール。カウント2-2。
「普通振るだろ!いいバッターになったもんだ」と橘周は、心の中だけで
ニヤリ。
5球目:沈むシュートをインコースぎりぎり。空振り三振!!!
「よっしゃー。ゴールド、サヨナラ負けの屈辱を思い知ったか(笑)」と今度は本当にニヤリ。
「うまくインコース突かれた。ちくしょー次はまた打つ!」とゴールド。
しかし、橘周の活躍はまだ終わらなかった。9回2アウトナンナー無しからのバッターで登場。何かが起こりそうな雰囲気が球場に充満している。
ピッチャーはホームランを恐れて、フォアボール。
自分がホームに帰ればサヨナラ勝ちの場面。しかも盗塁禁止が解除されている。
実は37歳の今でもスピードはメジャー最速レベル。いや最速なのだ。
でも今シーズンもチーム方針で盗塁はわずか1。相手のクローザーもここにきて盗塁だけはさすがに無いだろうとの読み。
そんな雰囲気の中、2球目に橘周は楽々と盗塁を決めた。あまりに速くて、余裕のセーフだ。
これでドジャースは動揺し、ヤンキースタジアムには勝てそうな雰囲気に傾いた。
2塁上の橘周を警戒し過ぎたこともあり、センターオーバーの長打が生まれ、橘周は、サヨナラのホームを踏んだ。
大袈裟な表現をするなら、「正規のクローザーでありながら、バッターで走塁で守備で印象的な活躍をする歴史上唯一の選手」であることを、またしても証明して見せた。




