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地上10センチから世界を征する 剛腕の左のアンダースロー  作者: 伊藤ライリー
ニューヨーク・ヤンキース編
135/216

第135話:老いることに向き合って、改善してく

左のアンダースロー橘周は、37歳の大ベテランになる今シーズン、昨年ほどではないが、クローザーとして順調にスタートした。


今年のテーマをライジングカッターの精度アップにしたのは、理由があった。さらなる成長と変化を求めるためもあるけど、実は、一番は年齢による衰えを感じていたからだ。


ドジャース時代に腰痛から投球の勢いが衰えた時も、目先を変える意味でライジングカッターを増やしたが、その時とは似て非なる状況である。


30代後半になると、人間誰でも老いがやってくる。


老いは、反射神経、指先の感覚、動体視力等に影響があるが、橘周の場合は、”ライジングストレートを連投することが厳しい”ことに現われてきたのだ。負担の大きい投球フォームから、最後に指先で思い切りはじくストレートは、かなり身体への無理があり、3球、4球と連続して投げることが難しくなってきたのだ。


世界で、いや歴史上唯一無二の浮き上がるライジングストレートは、単にホップするのではなく、文字通り浮き上がるのだ。


今でも被打率、空振り率、脱三振率でメジャーリーグ史上1位をキープしている。その秘密は、バッターが点ではなくいわゆる線で捉えるなら、ダウンスイングをしないといけない。それも150キロのスピードに対して。ダウンスイングを選択すると、沈むボールを捉えることがより難しいし、何よりバッティングフォームを崩して不調に陥る可能性があるので、挑戦するにも大きなリスクが伴うのだ。


今後は、世界一の武器ライジングストレートの割合を減らして、今まで以上に有効利用することが必要になるのだ。これが橘周の老いへの対策である。


橘周「いよいよ俺にも老いが来ましたねーー」

高井「うーん。37歳になるからね。仕方ないよね。でもこれまで衰えずに

   よくぞここまできたよ」

橘周「先輩のおかげが大きいですよ」

高井「へへっ。嬉しいね。どんなにモテても夜更かしせずに、食べ物と

   睡眠に気を付けてきたことが一番だなあ」

壮太郎「よく独身で我慢できるよね(笑)」

橘周「壮は、食べ物にどれだけ気を付けることができるかがカギだぞ」

壮太郎「そうだねえ。普通なら我慢できないけど、2人が近くにいるから

    仕方なく守っているよ(笑)」


この3人が同じチームに所属していることが、本当に大きい成果となって表れていた。



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