第130話:WBCに臨む橘周・壮太郎兄弟と、次世代スター選手
橘周・壮太郎兄弟は、WBC日本チームのキャンプに途中参加した。
ここには、将来世界を席巻する可能性がある若手が、ジャイアンツから参加していた。しかも2人もいるのだ。
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1人目は、桜井淳。高卒4年目の大型三塁手。大柄な選手では珍しいスイッチヒッター。ミッキーマントルの再来と言われたり、192cmの身長からミッキーマントルを超える逸材とも言われている。
橘周のようにピッチャーはやらないが、強打、強肩、俊足、好守で、ケガに強い柔軟で強靭な身体と、あらゆるものを備えている。専門はサードだが、ショートもファーストも守ったことがある。
成績がとんでもないことになっている。
高卒1年目の途中で三塁のレギュラーを掴んだ。まずこれがとんでもない。
規定打席の半分程度なのに、打率.285、ホームラン12本、打点39、出塁率.389、盗塁6。
2年目には、いずれもギリギリながらもトリプルスリーを史上最年少で達成した。打率.312、ホームラン33本、打点89、出塁率.421、盗塁32。
3年目の昨年は、さらに信じられない快挙を達成した。
打率.335、ホームラン38本、打点108、出塁率.450、盗塁33。
打率、ホームラン、打点、盗塁の四冠王!プロ野球史上初のこと。
さらにゴールデン・グラブ賞、シーズンMVP、OPS1.0超え。
つまり、昨年は日米ともに、とんでもない成績を上げた日本人がいたということである。
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2人目は、村松裕。なんとまだ高卒2年目でセカンド。天才的な守備力とミート力で1年目にレギュラーを掴んだ有望株。6月に1軍昇格すると、プロ5打席目から8打席連続ヒットを記録し、守備でも堅実で華麗なプレイを見せ続けた。桜井ほどではないものの強肩で、しかも桜井と同レベルの俊足でもある。180cm80キロと細見で、パワーだけはそれほどでもないが、今後鍛えれば、ホームランが増えるかもしれない。
昨年の成績は、1年目で打率.305と盗塁12。しかしこの成績だけではWBCに出られない。その後の日本シリーズとハワイのウインターリーグで打率4割以上を残して両方で首位打者となり、WBCに選ばれない理由が無くなったのだ。
WBCでは先発、代打、代走、守備固めのどれでも使える選手であり、守備位置もいざとなれば内外野どこでも守れる器用さも持っている。
また、この松村もスイッチヒッターなのだ。
桜井も松村も橘兄弟と違って、いわゆる野球エリート。小学校の時から有名チームで鍛えられ、常に同年代の中ではハイレベルな試合に出て来た。国際大会の経験も豊富である。何より不思議な落ち着きがあり、将来を見据えて身体のケアや食べ物にかなり気を使っていた。
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さて、橘周の話に戻す。有望な若手が多いチームにどういった影響をもたらすのか?ピッチングでは他にアンダースローのピッチャーがいないので、技術的な指導は、???だ(笑)。どちらかというとピッチャーは橘壮太郎が指導係となった。
しかし、橘周はアメリカ、メキシコ、カナダ、プエルトリコ代表選出のメジャーリーガーのバッター、ピッチャーの情報が頭に入っているし、アメリカで戦う上での注意点等も心得ている。
そして、メジャートップクラスのスピードを維持する走塁でも師匠的役割だ。
走り方の基本を代表選手に叩き込んだ。陸上短距離を極めた上で、それを野球選手に合った走塁に改良を加えてきた経験者は、日本にはいないのである。
橘周の出場は、ヤンキースの要請もあり、リリーフピッチャーとしてのみとなった。バッティング練習と守備練習は気分転換のみで行うのだ。
そして日本チームは、当然のように日本での予選ラウンドは順当に勝ち、アメリカへ渡った。




