第13話:いよいよ先発マウンドに上がる左のアンダースロー橘
中継ぎ、抑え(ストッパー)ときて、今日は先発テスト。世界初の完投型左のアンダースローを目指してまた一歩階段を登れるか!
左のアンダースロー橘周投手が、いよいよ念願の先発マウンドに上がる。
ここまで1勝1敗5セーブと、新人にしては素晴らしい成績ではあるけど、本人からしたらまだまだこれからだと感じている、
実は先発は監督の希望でもあった。「橘の投げる姿をもっと長めに見たい。先発の方がじっくり腰を据えて投げられるし、あらゆる変化球を使える。それとあの投球フォームをずっと見られる(笑)」
これを言われてやる気がみなぎるとともに、気が楽になった。「思う存分に投げて失敗するのは仕方ない」と。
橘周投手の投球フォームについて説明する。普段はノーワインドアップから右足を高めに上げ、右足を降ろしながら同時に身体を沈めていく。右足がドンと地面に着いた反動を利用しながら勢い良く投げる。往年のアンダースローの名投手である山田久氏がモデルとなっている。これがアンダースローなのに、他にはいない速球を投げる秘密でもある。
人並外れた全身のバネと柔軟性、強肩、握力、指の力、バランス等全てを活かしたフォームである。それが、下から上に突き抜け、空気抵抗によって上方向にホップするストレート(フォーシーム)に現れている。その上で、アンダースローらしいコントロールの良さもある。全ての才能が揃ってバランスに長けているところは、ボクシング井上尚弥選手に通じるものがあると言える。
その日のハマり具合によっては、ランナーがいなくてもセットポジションで通すことがさてある。セットポジションでもほとんど球速は落ちない。まあほんの少しは落ちる。でもセットポジションの時のメリットは、クイックがランナーがいなくても使えるため、よりバッターのタイミングを外すことができる。それに若干ムッとするバッターもいるけど、まあお構いなしだ(笑)。
さて、この日のピッチングだ。7回4安打1失点(自責点1)。5回に不運な内野安打等2安打で1点取られた以外はゼロで封じた。何より三振14。この日は高めストレート、シンカー、ツーシームの主力に、忘れた頃に来るチェンジアップと右バッターのボールゾーンから外角のストライクゾーンに切れ込んでくるパワーカーブ(つまりバックドア)も有効に使った。その上右バッターへの内角低めストレートは、一瞬のけ反らせるフロントドアにもなった。低目のストレートはホップしない代わりに、真横にシュートするのだ。
もう一つ使いたい90キロ前後のスローカーブは、バッターに怒られると思い、この日はやめた(笑)。
8回も投げられる体力が残っていたが、監督やコーチの配慮でこの日は7回までとなったが、2勝目を挙げた。
先発としても充分通用することが分かった。それと、観客と視聴者を引き付ける投球フォームと時々浮き上がるストレート、多彩な変化球で、見ていて楽しいワクワクするという声が多くあり、益々人気を不動のものにした。
監督からも「素晴らしい、というか俺の予想通りだったぞ」と声をかけてもらったところで、やっと疲れが出たww。
今日は同僚と飲みにいくぞー、いや行かない。桑村コーチに言われたことでやり続けたいと誓ったことがある。「落ち込んだ時やうまくいった時ぱーっと美味いもの食って飲んでと行きたいと思うが、そんな時も平常心でいろ!そして毎日必ず8時間以上の睡眠を取るんだ。常に浮かれず、落ち込まず、毎日の食事と睡眠と気を付ける・・これを続ければ、成功確率が上がるし、長く活躍できる可能性が高まる。分かったな!」
今日も監督と桑村コーチの言葉を思い出してニヤニヤして寝よう(笑)と心で呟いた。




