第119話;6月初旬の野手からクローザーに戻り、若干投球スタイルを変えた
左のアンダースロー橘周は、6月初め野手出場3試合を経て、クローザーに戻った。3試合中2試合で劇的な活躍をして、またしても野手としてポイントゲッターである証明をして見せた。
肩と肘を休ませて復帰したクローザーでは、やはり無敵の活躍を続ける。
橘周のピッチングの重要なテーマの1つは、「バッターに慣れさせない」ことである。左のアンダースローの弱点は右バッターから見やすいことなので、最大の武器である浮き上がるストレートがあっても、また沈むシュートやスプリットのようなツーシームがあっても、慣れられると打たれる可能性が高くなるのだ。
6月は最近投げていなかった、右バッターから’遠ざかるツーシーム’と右バッターの膝元に’浮き上がらないカットボール’を混ぜることをテーマに掲げた。
つまり、上下の変化が大半だった5月までの投球に、横の変化も追加することで、バッターの慣れを防ぐこと。
橘周の特殊な能力の1つは、投げる球種を増やしても、それまで投げていた球種の威力が落ちないこと。これは多くのピッチャーは、球種を増やすと、威力が半減する球種が出てきてしまうことがあるが、橘周は、指や肩の柔らかさ・強さ、器用さ等でそれを防いできたのだ。
遠ざかるツーシームと低目のカットボールを織り交ぜるのピッチングは、やはり効果があり、各バッターは嫌な顔した。的を絞ることが余計に難しくなり、浮き上がるストレートへの慣れを打ち消す効果があり、快投を続けた。
6月は、初の失点を喫するが、その試合も勝利し、1勝8セーブと活躍を続け、トータル1勝36セーブと、セーブ数でダントツの1位をキープしている。
6月の月間MVPは、弟に譲った。
弟の壮太郎は4勝1敗防御率0点台の好成績で、やっとこさ月間MVPを手にしたのだ。トータルでも12勝3敗とハーラーダービーの単独1位になった。
これで兄弟で3ヶ月連続の月間MVPと、これも画期的なこと。