第105話:いきなりファースト橘周
左のアンダースロー橘周が、レギュラーシーズン3ヶ月を経過し、ちょうど20セーブを上げていた。ここで、チームは3日間のノースローと5日間の登板間隔を開けることを決めた。肩、肘、腰等の披露を軽減するためだ。
でも卓越した身体能力を備えているため、身体はいたって元気だ。なので4試合もベンチを温めるのも勿体ない。そのため、ベテランのファーストを休ませるため、橘周は、2試合ファーストで野手として出場することになった。
高井「ついにヤンキースの選手で二刀流で出場かあ。しかもファーストで」
橘周「ちょっと守備は不安ありますけど、多分大丈夫でしょう」
高井「草野球ではショートもセカンドも経験あるしね」
橘周「サインの無い150キロ超えのカットボールやツーシームはやっかいで
すけどね」
メジャーでのファーストは、強肩野手の送球速度が異常に早く、しかも当然ノーサインで変化するのので難易度が高い。しかしこのためにドジャースの時から練習を積んできたし、日本でもドジャースでも守備機会があった。
9番ファーストでの出場。
三振とファーストゴロの後の3打席目。ついに捉えた。ライトへのツーランホームラン。何をやっても一流である橘周の面目躍如だ。
4打席目は、9回勝ち越しの犠牲フライで勝利に貢献。
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次の試合は、弟の橘壮太郎が先発する。試合前の兄弟の会話。
橘壮太郎「グランドに周と2人揃うのなんかへんな感じ(笑)」
橘周「そうだなあ、試合では草野球含めて初めてか?」
橘壮太郎「そうだね。守る時は視界に入るから、あまり動かないでよね」
橘周「いやいや、ずっとチョロチョロしていてやるよ(笑)」
この日は8番ファーストで先発。守備で見どころがいくつかあった。
まず1塁ゴロを横っ飛びでつかみ、カバーに入った橘壮太郎にトスしてアウト。次は1アウト2塁でサードゴロの場面。送球が大きく高く外れたのを見て、2塁ランナーはスタート。しかし、橘周の垂直飛びは1m超えだ。高いジャンプでボールをキャッチし、慌て2塁に戻ろうしたランナーを刺した。先制点必至なところを防いで見せた。
兄弟での連携プレーも自分の超絶ジャンプで得点を防いだことも、なんか気恥ずかしいww。
そしてバッティング。この日初めてのチャンス1アウト1塁3塁での2打席目。ライト線を破り、普通の選手なら、いや多少俊足でもツーベースのところをスリーベースとした。先制の2打点だ。その後の浅目の外野フライでもタッチアップで余裕のセーフ。
つまり、兄の橘周は、弟の先発試合で走攻守で活躍し、結果壮太郎は、7回1失点で勝ち星を拾った。
試合後のバスでの兄弟の会話
壮太郎「いやー昨日の夢以上に貢献してくれたね」
橘周「夢に俺が出た?」
壮太郎「そうそう。俺の牽制球でアウト取った」
橘周「それだけか?それよりは壮の勝ち星に大大大貢献やな!」
壮太郎「次の試合は、センターでファインプレー連発しておくれ」
橘周「おいおい、じゃあ監督に言ってみてくれ(笑)」
兄弟にとってみればまさに夢のような試合だった。
兄弟ともに野球から離れた時期があり、ひょっとしたら今頃2人とも別の仕事をしていた可能性も充分にあった。今ではメジャーリーグでしかもスーパースターの兄弟である。