ワタシの瞳を見て
小さい時からずっと一緒だった幼馴染
お互いに優しくて仲良し
異性との友情は成り立つということを同級生たちに証明してきたけれど、そろそろ腐れ縁を卒業するタイミングかも?
友達から恋人になる瞬間は、よく見ることが大事
「あなたの隣のかっこいい人のこと、好きになるかもしれない」シリーズ
短編小説、各話完結読み切り
ガラス細工の繊細な輝きが、その目に反射したのかと思った。
「ほんと好きだね」
「ガラスの透明感に吸い込まれるの」
僕は小さく笑いながら頷いた。
家の近くの商店街は、小さなお店がたくさん並んでいる。
その中を、幼馴染の結愛と僕は一緒に買い物に来ていた。
結愛は昔からガラス細工の小物が大好きで、修学旅行の時の自分用のお土産に選んでいたのを覚えている。
「でも、今日は結愛のものを買いに来た訳じゃないでしょ」
「そうだった」
結愛と僕、同じ高校に通っている友達の誕生日のプレゼントを、二人でお金を出し合って買うと決めてきたのだ。
でも、店頭に並べられたガラス細工の小物を見る結愛の横顔から目が離せない。
元々大きい方だと思う目が見開かれて、キラキラの効果音が聞こえそうなぐらい輝いている。
お互いに小さいころから知っている幼馴染。
仲の良い女友達。
結愛のことは知りすぎるほどに知っていて、今更好きだなんて言えない間柄だ。
………本当は好きなんだけれど。
「ねぇ知ってる?」
「何を」
「好きなものを見る時の目って、瞳孔が開いてるんだって」
「へぇぇ、よく知ってるんだな」
「今、ワタシの瞳孔、開いてる?」
「え? どうだろう?」
正面から見ようとした僕には視線もくれず、店の人に了承を得てガラス細工を手に取った結愛の顔を、じっと見つめる。
「若干開いてるかなぁ…」
「わかんないか」
「いや、わかるよ」
だって、僕は結愛のことを16年間見てきたんだから。
「目をくり抜いて並べて大きさ確認したらわかるかな」
「いきなり怖いこと言うなよ」
僕と結愛、同じタイミングで笑い合って嬉しくなってしまう。
この瞬間がたまらなく好きだ。
「瞳孔って黒目の真ん中のところでしょ?」
「そうそう。猫とか暗いとこに居ると黒目が大きくなって、明るいとこだと黒目が細くなるっていうやつ」
「はいはいはい、見たことあるある」
体の仕組みは不思議だ。目の機能が猫と人間が同じだなんて。
「黒目が大きい猫って可愛いよね」
「細くなってる猫って、引っかかれそうで怖い」
「猫可愛いなぁって見てる人間の目も黒目が大きくなって可愛くなってるのっておもしろいね」
「ほんとだ! そういうことだね!」
また同じタイミングで笑う。
いつものこととはいえ、どんどん楽しくなってくる。
幼馴染というアドバンテージがあったという理由だけで、僕は結愛と仲良くなった訳じゃない。
他愛のない会話のはしばしで、気が合うなぁと思うのは、笑うタイミングが同じなところ。
きっと結愛もそう思っている。
だって、さっきよりも楽しそうにしてるから。
「ねぇねぇ、もう1回ワタシの瞳孔の大きさ見てみて」
目玉くり抜くとかもう言わないでよ? と文句を言いながら見直した。
大きな瞳が僕のことをまっすぐ見返してくるのが少し恥ずかしくて、でもその目の中に僕の顔があるのが少し嬉しくて。
「うん、結愛はいつ見ても可愛い」
僕の自慢の幼馴染だと肩を叩いたのだけれど、結愛はそれで終わりにしてくれなかった。
「まだ気づいてないの?」
「え? 何??」
「ワタシ、今、好きなものを見てるから瞳孔が開いてると思う」
恥ずかしそうに笑っている僕の顔が、結愛の瞳の中に見えた。
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