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お化け捜査官の詩  作者: 加賀山みやび
11/19

 その日の夜。

 テーブルには、御飯、しじみの味噌汁、そして大皿に、じゃが芋の煮っころがしが並んでいた。僕の大好物だ。

「母さん。どうして僕たち、ここに引っ越してきたの?」

母さんと二人で夕食を食べながら、何気なく聞いてみた。

 ある日、突然、引越しが決まった。僕はちょっと驚いたが、特にアレコレと質問もせず、おとなしく母さんに従った。その頃、母さんからは、あまり詳しいことを話したくないと言う、オーラみたいなものを感じることがあった。それについて、母さんに文句を言おうと思ったことは一度もない。『大人の事情ってやつかな』そんな風に勝手に考えて、納得していた。

「お父さんが、いつかここで暮らしたいって、言ってたから」

それが、母さんの答えだった。

 母さん自身は、この町に知り合いがいるわけでも、思い出の場所というわけでもないようだ。実際、初めてこの町に来たのは、引っ越しの当日だったらしい。

「でも、古い地図、持ってたのはどうして?」

「ああ、あれは、父さんのよ。父さんはね、子供の頃、少しだけ、この町に住んだことがあったらしいの。その時に何があったのかは知らないけど、よっぽど気にいったのね。よく、いつかこの町で暮らすんだって言ってたわ。私はそれに影響されちゃった。匠は不満?」

「そんなことないよ。友達もできたし」

「よかった」

「でも、父さんはこの町のどこがそんなに気に入ったんだろう」

それは、母さんにもわからなかった。実際、父さんにしても、親戚とか、知り合いなんかがいるわけでは無かった。

 父さんの地図には、学校近くの古墳に赤鉛筆でまるがつけられていた。父さんは、あの場所に行ったことがあるに違いない。ならばあの石碑も見ているかもしれない。

「父さんて、どんな人だった」

「どうしたの急に。何かあった?」

「別に、何となく」

「面白い人だったわよ。無口なんだけど、いつも楽しそうだった。どんな時にも、何か面白いことを探しているような目をしてた」

そう言った母さんも、とても楽しそうな目をしていた。


 僕は、一瞬、母さんに、お化け捜査官のことを聞いてみようかと思ったが、少し考えてから、やはりやめた。

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