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ウィッチエアクラフト〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜魔法の復活編  作者: 朱坂卿
再・第二翔 新兵器護送任務 
7/50

#7 護送任務開始

「さあ……見えて来ましたわよ、アメリカが!」

「おお……久しぶりだな。」

「はい、マリアナ様!」

「あの空宙都市の一件以来だったね……」

「うん、そうだね……」

「……」


 アメリカ西海岸に迫りつつある、魔法塔華院コンツェルン艦隊。


 その旗艦より見えてきた海岸線を前に、凸凹飛行隊はそれぞれの思いを抱えていた。


 魔法塔華院コンツェルン艦隊の旗艦は、あの強襲揚陸艦ウィッチーズアンフィビアアサルトシップである。


 更に複数の潜水法母(ジャドウマザー)と、潜水聖母艦シャドウホーリーマザー――潜水法母の補給を担う母艦である――を戦隊旗艦として構成される潜水法母戦隊とで艦隊は構成されていた。


「しかし……魔女木さん、改めて言いますが。そのかぐやさんはあなたがきちんと面倒見てくださらないと困りましてよ!」

「そうよそうよ、魔女木!」

「あ、そうね……」


 そこでマリアナは、そう青夢に釘を刺す。


「わー、すごい! あれがアメリカ? 初めて見る!」

「ええ、そうね……まあでもかぐやちゃん、一旦落ち着いて」


 青夢がそう言われているそばから、かぐやは自由な行動を取り彼女を悩ませる。


 かぐやは理由は不明ながらも、何やらあの円盤群を擁する連中に狙われているようであり。


 本来ならば、日本に置いて来るべきだったのだろうが。


 青夢は嫌な予感がし、同行させて直接護衛すべきだと提案したのである。


「すごーい、デッキ高ーい!」

「わ、分かったから!」


 が、今はその決断を若干後悔しつつあった。

 さておき。


 ◆◇


「Welcome to USA! ようこそアメリカへ、魔法塔華院concernの皆さん!」

「Yes、光栄なまでの盛大なご歓迎感謝いたしますわ。」


 そうしてロサンゼルスに着港した凸凹飛行隊は、アメリカ軍による歓迎を受けたのだった。


 彼女たちとは150m以上という不自然な距離を取って向き合っての歓迎であるが、これは警戒からではない別の理由からであった。


「あれ……? えっとすみません、デイヴさ……いえ、ソー軍曹はどちらに?」


 青夢はしかし、並んだ軍の面々を見て首を傾げた。

 そう、かつて空宙都市エルドラドを訪問した際出迎えてくれたデイヴ――デイヴィッド・R・Y・ソーの姿が見当たらないのである。


「Well、ソーは別の場所に勤務となりまして。」

「別の? どちらに」

「おほん! 魔女木さん、それまでであってよ。」

「! あ、ご、ごめんなさい……」


 一兵卒の駐屯地という機密情報をうっかり聞き出そうとしてしまった青夢を、マリアナは睨み。


 青夢もはっとなり、謝る。


「No problem! さあ、では……こちらをご覧いただこう!」


 場の空気を変えようとしてか、アメリカ軍の面々は割合にわざとらしく明るく叫び。


 やがて、先述のアメリカ軍・凸凹飛行隊の不自然な間合いの理由――面々の後ろよりゆっくりとやって来た軍用車(ウォーワゴン)に載せられた"それ"が姿を現す。


「マリアナ様、あれは」

「ええ、あれが今回の護送対象であってよ!」


 法使夏の問いかけに、マリアナは"それ"を指差しながら答える。


 搭載された軍用車(ウォーワゴン)は実に繊細な動きをしながら彼女たちにゆっくりと右の横っ腹を見せる形で停まる。


 全容を現した"それ"は全長にして100mはあろうかという円筒状の物体。


 先は円錐型であり、尾部に当たる部分には鰭のような翼が四つついている。


 これは例えるならば――


「あれは何だ、誘導銀弾(シルバーブレット)か?」

「いいえ、確かに同じミサイルの親類ではあってよ……ただ、飛距離や威力は段違いであってよ! そう……これは一種の戦略兵器ですわ。」

「せ、戦略兵器……」


 剣人の問いかけにマリアナは、機密の一端を明かす。


 極超光量使速飛翔体オーバーウリエルズライトスピーダー


 これを搬入し凸凹飛行隊にお披露目するために、アメリカ軍と彼女たちの間合いは存在したのである。


 同時にこれはあの女教皇がアメリカを介し日本政府に手配した新兵器であるが、凸凹飛行隊にはそこまでの内情は知らされていなかった。


 何よりその威力の全容も、未だ彼女たちには明かされていない。


「こんな得体の知れないものを得体の知れないまま運ばなきゃいけないなんて……」

「わたくしたちにはそれが仕事であってよ、それならば。中身がどうあれ、職務を淡々とこなすのが筋ではなくって?」

「そうよそうよ、魔女木!」

「分かってるけど……」


 青夢が思わず口にした言葉に、マリアナと法使夏はここぞとばかりに噛み付く。


 かくして。

 それぞれが複雑な事情や感情を抱える中で、この任務が開始されたのだった。


 ◆◇


「全方位、今のところ問題なし!」

「ええ、ご苦労様であってよ。」


 そうしてロサンゼルスより出港した魔法塔華院の艦隊は。

 一路太平洋を横断し、日本への極超光量使速飛翔体オーバーウリエルズライトスピーダー護送を急ぐことになった。


 海路を行くこの任務は、やはりそれなりの日数を要するため。

 途中ハワイに立ち寄り食糧や物資の補給を受けることになっている。


「わーっ、海海い!」

「分かったからかぐやちゃん!」

「ほら、青夢を困らせちゃダメでしょ!」


 相変わらず凸凹飛行隊の面々が座乗する強襲揚陸艦ウィッチーズアンフィビアアサルトシップのデッキ上ではしゃぐかぐやを。


 青夢やそのサポートに入っている真白と黒日は宥めようと、必死に追いかける。


「まったく……本当に呑気なものですよね、あいつらは。」

「まあ魔女木も、あれを宥めることはあれはあれで大変だと思うのだが。」

「あんなグダグダを後で諌めなきゃいけないマリアナ様の方がよほど大変だって。」


 その様子を艦橋窓から見ていたマリアナ・法使夏・剣人である。


「まあよくってよ、雷魔さん。ああして日常を送れることも今のうちだけかも知れませんもの。」

「はい、何と寛大なマリアナ様……!」

「ああ、そうだな……」


 そう言うマリアナの目は、険しかった。


「(あの()を載せる以上、あの縦浜で会敵した謎の集団からまた狙われる覚悟はしていなくてはよね……いえ、載せていようがいまいが。彼らの狙いはわたくしたちが今運んでいる戦略兵器の可能性もある……)」


 彼女の胸中には、そんな考えが渦巻いていたのだ。


「……わたくしはここまで考えていてよ。さあ、魔女木さん。あなたはここまで考えられるのであって?」

「ま、マリアナ様?」

「魔法塔華院?」


 マリアナはそんな考えから、つい青夢――前任の凸凹飛行隊隊長だ――に対してそんな問いかけを口に出し、法使夏や剣人は少し困惑している。


「よし、捕まえた! もうかぐやちゃん、ダメじゃない!」

「ああ、捕まっちゃった〜!」

「もう、かぐやちゃんたら!」

「あはは!」


 そんなマリアナの胸中どころか言葉は、艦橋からでは届くはずもなく。


 かぐやを後ろから抱きしめ真白、黒日と笑い合う青夢の表情は、マリアナからはとても呑気に見えるのだった。


「そうであってよ、魔女木さん……やはり、あなたでは飛行隊長は務まらなくってよ! わたくしが元からなっていればよかったのですわ!」

「そ、その通りですマリアナ様! わ、私だって元々あんな奴が飛行隊長なんて反対でしたよ!」

「……」


 そう言うマリアナだが、どこか無理をしている様に剣人からは見えた。


「……魔法塔華院、お前も嘘は下手だな。」

「!? な、何を言うのであってミスター方幻術! わたくしは嘘などついていなくってよ、わたくしこそが最初から飛行隊長に相応しかったのですわ!」

「そ、そうよそうよ方幻術!」


 剣人がその感覚を口に出すや、マリアナは激しく動揺した。

 さも、図星であるかのように。


「そうか……だが、無理はしすぎるなよ!」

「だーかーら、無理などしていなくってよ!」


 それがますます剣人には無理しているように見え、彼は最後にそう言って踵を返した。


「まったく、何なのよあいつは! ……マリアナ様、お気になさらず。あんな奴は」

「あら、雷魔さんこそ甘く見ないでほしくってよ! わたくしがあんな言葉に心乱されているなどと」

「も、申し訳ございませんマリアナ様!」


 フォローするつもりが火に油を注いだようになり、法使夏は慌てて平謝りをする。


「(そうよミスター方幻術……あなたに心配されるまでもなく! わたくしは必ず証明して見せますわ、飛行隊長はわたくしだけだと!)」


 マリアナはそんな法使夏の謝罪を聞くのもそこそこに、やはりそんな考え方に浸っていた。


 ――hccps://jehannedarc.wac/! セレクト、ジャンヌダルク リブート エグゼキュート! ……ほら、今はこの通り。うんともすんとも言わないでしょ?


「(本当にあなたには大人しくしていてほしくってよ、魔女木さん! 今の法機の力なきあなたには……)」


 そんなマリアナの胸中に引っかかっていたのは、やはり一度はレッドドラゴン――ひいては法機ジャンヌダルクを起動させた青夢のことであった。


 ◆◇


「ではマリアナ様、先にお休みをいただきます!」

「ええ、どうぞお休みになられるとよくってよ雷魔さん。」


 そしてその夜。

 揚陸艦艦橋部にてマリアナに頭を下げる法使夏である。


 ハワイまではまだ一週間近く所要時間があり、その間にこの何も目標のない洋上では敵襲を受ける可能性があったのでマリアナは深夜までこの艦橋に詰めることにしていたのである。


「ありがとうございます! ……でもひどいですよ、あいつら。マリアナ様に全て押し付けて自分たちは先に寝ちゃって!」

「まあ仕方なくってよ、雷魔さん。やはりここは、わたくしが締めなくってはよね。」

「は、はいマリアナ様!」


 他の飛行隊メンバーがさっさと床に就いたことを苦々しく思いながらも、マリアナは一層その気持ちを固める。


 そうしてしばらく経ち、夜も更けた頃であった。


 ◆◇


「2時の方向に、機影多数!」

「……未確認飛行物体ではなくって?」

「いえ、これは確認済みです……識別信号より、これは以前縦浜で会敵した円盤群であると断定!」

「……やはり、おいでなさってよね。」


 レーダー手の声が艦橋内に響き、たちまち艦内は物々しい雰囲気となる。


 大方の予想通り、やはり敵襲があった。


「狙いは護送対象の新兵器かはたまたあのかぐやさんか……どちらにせよ飛行隊長と魔法塔華院コンツェルンの名にかけて!」


 マリアナはこれからの戦いに、自分を奮い立たせる。

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