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ウィッチエアクラフト〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜魔法の復活編  作者: 朱坂卿
再・第四翔 米中VI奴隷獲得宇宙戦争
32/50

#32 ゴグとマゴグの民を惑わし 

「ふん……また奇っ怪な姿になったわね! 忌々しい赤い龍!」


 女教皇が、法機ヨハンナから叫ぶ。


 無理もない。


 先ほどギリギリまで追い詰めていたはずの三段法騎戦艦レッドドラゴンは、艦橋以外同じとはいえその艦橋がまるで違う姿になっているのだから。


 青夢曰く、巨魔の宙飛ぶ(スペーストライア)三段法騎戦艦(ドファザーギガス)ゴグマゴグ。


 その艦橋は今融合している幻獣機(エイドローン)の一つである、幻獣機(エイドローン)ゴグマゴグのごとく双頭の巨人型上半身のような姿である。


「……お願い、メアリーさんに使魔原ミリア! 三段法騎戦艦を宇宙の、第二電使の玉座(スローンズ)に向けて発進させて!」

「あいよ! さあミリア、色々と言いたいかもしれないけど」

「ええ……ええ! 言いたいことは山ほどあるけど、姐様や騎士団長やアラクネさんたちの意思だから!」

「ふっ……いいねえ!」


 青夢の頼みを進んでという形であれ、不承不承という形であれメアリーとミリアは引き受け。


「……セレクト、巨魔の宙飛ぶ(スペーストライア)三段法騎戦艦(ドファザーギガス)ゴグマゴグ!! エグゼキュート!!」


 彼女たちが三段法騎戦艦に命じるや、今も飛行のため火を噴いている艦尾堕電紫衣機関(フォールンエンジェン)は、更に火を噴き。


 巨魔の宙飛ぶ(スペーストライア)三段法騎戦艦(ドファザーギガス)ゴグマゴグは、高空へと踊り出ようとする。


 ◆◇


「あのまま宇宙に行く気とはね……それもいいでしょう! ですが……試練を与えさせてもらいましょう!」

「! そんなんさせるかいな!」

「ええ、その通り!」

「ええ、青夢の邪魔はさせない!」


 それを見ていた法機ヨハンナも動き出し、そうはさせじと法機マルタにディアナ、アラディアもまた動き出す。


「ふん、こちらこそこれ以上あなたたちに邪魔はさせません! ……hccps://ioanna.wac/、セレクト! 女教皇の選択デッキオブザハイプリーステス! 皇帝(ザ エンペラー)魔術師(ザ マジシャン)戦車(ザ チャリオット)! hccps://ioanna.wac/GrimoreMark/、セレクト 魔術帝の戦車行マジックエンペラーズマーチ、エグゼキュート!」

「おうや……くっ、何か放って来たでえ!」


 女教皇はそれを煩わしがり、法機ヨハンナに命じて技を放つ。


 たちまち法機から放たれた、二頭立て戦車型のエネルギー弾が宙を飛び回り。


 それを察知した法機マルタやディアナ、アラディアは回避行動を取る。


「ふふ、しばらくそちらを相手してもらいましょう! さあ巨魔の宙飛ぶ(スペーストライア)三段法騎戦艦(ドファザーギガス)ゴグマゴグとやら、その力本物か試させてもらいましょう!」


 ようやく敵機三機を巻いた法機ヨハンナを駆り立て、女教皇は三段法騎戦艦ゴグマゴグを目指す。


「おや……5時の方向から接近する法機だ! これはあの国籍不明法機だね!」

「はい、メアリー姐様!」

「もう追いつかれたのね……」


 その三段法騎戦艦ゴグマゴグ艦橋内では乗組員三名が、口々に情報交換を行う。


 三人がいるとはいえ、彼女たちは艦橋内同ブロックに同居している訳ではない。


 青夢は元々の黒客魔レッドドラゴンの操縦席をそのままに、メアリーもミリアもそれぞれの法機キルケから生えた右半身内操縦席、左半身内操縦席とバラバラに区切られた場所にいた。


「宇宙に行けるの!? ねえねえ!」

「行けるわ、かぐやちゃん! だから、少し大人しくしててね。」


 いや、そのレッドドラゴンの操縦席には青夢のみならず。


 その後部スペースにかぐやが鎮座していた。


「ふふ……さあ三段法騎戦艦! その後ろに備えた三重の飛行甲板こそ、あなたの相変わらずのセキュリティホールなんですよ!」


 そんなやりとりが艦内で繰り広げられる間、女教皇は法機ヨハンナの速度を上げる。


 いや、そればかりでなく。


穢れし金杯(ゴールドサーバ)――

 hccps://www.Babylon.chal/、セレクト コネクティング! 堕電紫衣機関(フォールンエンジェン)――

 hccps://BabylonTheGreat:xxxxxx@www.zodiacs.mc/zodiacs.engn

 セレクト、コネクティング! ダウンロード!」

「!? あれって……まさか!」


 青夢が驚いたことに。


 女教皇が命じるままに、法機ヨハンナの胴部からは、女性を思わせる上半身が生え。


 さらに機体胴部も先端が尖ったものから、零戦のような平たい形状に変わり、かつて花弁型プロペラがあった場所は爆炎を噴き出す堕電紫衣機関(フォールンエンジェン)を備えた姿となった。


 これは。


「す、戦乙女の宙飛ぶ法騎スペースライドオブワルキューレ!? ま、まあ当たり前か……あれも法機だし。」


 青夢が今一度驚いたことに。


 法機ヨハンナは戦乙女の宙飛ぶ法騎スペースライドオブワルキューレヨハンナとなり、今三段法騎戦艦ゴグマゴグに追いつこうとしている。


 やはり目指すは、その三段法騎戦艦後部の三重の飛行甲板だ。


「おいおい、こりゃあ追いつかれちゃうよ!?」

「そうよそうよ!」

「あ、青夢ちゃん!」


 その様子を艦橋部から見て焦るは、メアリーとミリアとかぐやである。


「大丈夫よ、落ち着いて! ……メアリーさんに使魔原ミリア、また新しく頼まれてくれる?」

「は、はあ!? 魔女木、またあんた私たちを顎で使って」

「何言ってんだいミリア! もうこの三段法騎戦艦にあたしら自身の法機を合体させた時点でその娘たちとは一連托生だよ。それとも覚悟がまだ足らないってかい?」

「ん……はい、姐様……」


 が、妙に冷静にまた指示を出す青夢に少々ふくれる法使夏だが、メアリーに窘められ尚ふくれながらも頷く。


 そして。


「さあ、そろそろこの法騎で」

「hccps://circe.wac/」

「hccps://medeia.wac/」

「edrn/fs/gogmagog.fs?arts=TwinStreamーーセレクト !! ツインストリーム!! hccps://circe.wac/GrimoreMark/、セレクト 鉄壁の守護ストリーミングウォール!! エグゼキュート!!」

「あら……艦が!」


 法騎ヨハンナで今にも三段法騎戦艦の三重飛行甲板へ乗り込もうとする女教皇だが、そこで青夢の指示を受けたメアリーにミリアにより三段法騎戦艦に動きが生じ。


 その艦体に備えた全砲門より放たれた無数の火線は、艦体にエネルギー体として纏わりつき己を象った防壁となる。


「なるほど……これにより寄せつけないつもりなのですね!」


 そんな三段法騎戦艦ゴグマゴグの状態に驚く女教皇だったが。


「hccps://diana.wac/! セレクト 月の弓矢(マンスボウ)!」

「hccps://aradia.wac/、セレクト 魔女の福音(ゴスペルオブウィッチ)!」

「エグゼキュート!!」

「hccps://martha.wac/ セレクト! 子飼いの帯(パニッシングサッシュ) エグゼキュート!」

「む!? おや……そういえばいましたね!」


 突如法機ディアナとアラディアにマルタの同時攻撃が飛来し、法騎ヨハンナを反転させて躱す。


「ありがとう、真白に黒日に魔女辺赤音! よし、このまま宇宙に」

「……セレクト! 女教皇の選択デッキオブザハイプリーステス! 愚者(ザ フール)吊るされた男(ザ ハングドマン)欲望(ザ ラスト)! hccps://ioanna.wac/GrimoreMark/、セレクト 逆さ吊り愚者の禁欲リバースグリーディーフォビドゥン! エグゼキュート!」

「な!? ぐっ!」

「き、きゃああ!」

「か、かぐやちゃん!」

「うわっ!?」

「きゃ!? ね、姐様!」


 青夢がそこで安堵したも束の間。


 女教皇が法騎ヨハンナに命じ放った波動は三段法騎戦艦を覆うエネルギー体に伝わり。


 その影響か三段法騎戦艦はぐるりと逆さまになり、艦橋内の青夢にかぐや、メアリーにミリアは驚く。


「あ、青夢!!」

「さあ、今ね! ……セレクト」

「!? そうはさせない……hccps://diana.wac/! セレクト 月の弓矢(マンスボウ)!」

「ええ、真白! hccps://aradia.wac/、セレクト 魔女の福音(ゴスペルオブウィッチ)!」

「エグゼキュート!!」

「む!? もう……また邪魔を!」


 その隙にもうひと押しを加えようとする女教皇だが、そこへ真白と黒日は法機ディアナとアラディアを急行させ。


 法騎ヨハンナめがけ、無数の光矢と波動を放ち遠ざける。


「よし、今や! ……hccps://martha.wac/、セレクト! 処女の慈悲(ディバインアクア)、エグゼキュート!」

「おおっと!」

「これは……マルタの力ね!」

「あ、ありがとうございます騎士団長!」


 その隙に赤音が法機マルタで急接近し、三段法騎戦艦のエネルギー壁めがけ波動を放つや。


 また三段法騎戦艦は逆さま――逆さまの逆さま、すなわちまっすぐとなり、ようやく姿勢を安定させる。


「今や、魔女木の姉ちゃんの親友たち! あたしらもあの三段法騎戦艦に乗り込むさかい、邪魔者は通せんぼしいや!」

「了解! 黒日、これから放つのは……私たちの罪の証よ! 分かるでしょう? hccps://diana.wac/! セレクト 月の弓矢(マンスボウ)!」

「ええ……真白! hccps://aradia.wac/、セレクト 叛逆の魔術(リベリオンズアーツ) !」

「hccps://diana.wac/GrimoreMark、セレクト 月の女神光像(ディアナズスタチュー) エグゼキュート!」

「ん!? あれは」


 赤音の呼びかけにより。

 真白と黒日が示し合わせて放ったのは、何と。


 かつて自分たちが新たな女王を名乗り、青夢と戦った時に使ったあの技だった。


 たちまち法機ディアナとアラディアから放たれた無数の光矢と火線は、かつての新たな女王――黒客魔(ハックマ)バビロンザグレートを象ったエネルギー体として像を結ぶ。


「さあ、やっちゃいなさい月の女神光像(ディアナズスタチュー)!」

「くっ、高エネルギーな矢と波動が! 厄介ね!」


 そこから放たれたエネルギーの雨により、法騎ヨハンナは三段法騎戦艦から更に距離を取らざるを得なくなる。


「よし、今や!」

「はい!」

「うん!」


 その隙に三段法騎戦艦を覆うエネルギー体に、彼女たちを引き入れるための穴が空き。


 そこから法機マルタにディアナ、アラディアはエネルギー体内部に入り込み、三重の飛行甲板のうち真ん中のものに着陸して艦内部に入っていくと同時に、エネルギー体の穴は閉まる。


「よし、ええで魔女木の姉ちゃん!」

「うん、青夢!」

「私たちも、赤音さんも皆乗れたよ!」

「よし……メアリーさんに使魔原ミリア。三段法騎戦艦ゴグマゴグ、最大船速でお願い! 改めて。目標、第二電使の玉座(スローンズ)!」

「ああ、行くよミリア!」

「はい、姐様!」


 そうして役者が揃った舞台とばかりに、三段法騎戦艦は。


 艦尾堕電紫衣機関(フォールンエンジェン)噴射口より更に大きな爆炎を噴き上げ。


 青夢が指示した通り、最大船速で宇宙へ向かう。


「よし、全艦戦闘配備よ! 総員、万が一に備えて宇宙装備着用! 私とかぐやちゃんはここのを。」

「あ、これね! 了解!」

「真白や黒日に魔女辺赤音は艦内倉庫のものを!」

「ああ、了解や!」

「了解!!」

「それでメアリーさんと使魔原ミリアは」

「ああ、あたしらも操縦席に万が一のため備えてあるよ!」

「ええ、だから言われるまでもないわ!」

「了解! ……よし。後は。」


 そのままテキパキと全艦に指示を出した青夢は、自身も宇宙装備を着用しつつ頭にあのURLを念じる。


 hccps://zodiacs.mc/Magog


 そう、先ほど仮想世界マゴグに強制ログインさせられた時に頭に浮かんで来たURLだ。


「……さあ、皆装着し終えたら急いで戦闘配備よ! 法機マルタにディアナ、アラディアは発進準備を! メアリーさんと使魔原ミリアは艦橋操縦席に!」

「応!!」

「だから、指示されるまでもないって!」


 青夢はまたも、そう指示を出した。


「くっ……これでは追いつけたとしても宇宙……ならばいいでしょう、あなたの墓場はどこでもいいわ!」


 尚も月の女神光像(ディアナズスタチュー)を相手取りながらも、女教皇は法騎ヨハンナから去り行く三段法騎戦艦を睨みそう宣言する。


 そう、こうなれば戦場はやはり宇宙だ――


 ◆◇


 その頃、仮想世界マゴグでは。


「hccps://yangguifei.wac/、セレクト 甘美な茘枝(スイートライチ) エグゼキュート!」

「hccps://jiangqing.wac/、セレクト 王老五コンフュージングアクト エグゼキュート!」


 尚も法機楊貴妃と江青で飛び回りながら、エネルギー弾と幻惑で空対空攻撃を行う呪華と金東である。


「hccps://titania.wac/、Select 取り替え子論争(チェンジリング)! Execute!」

「 hccps://giganticmandrake.mna/、Select 風元素(エレメンタルウインド) Execute!」

(きゃあ)!!」


 しかし、対するアメリカの法機ティターニアとシルフは天候操作で反撃し。


 それにより中国側法機群は体勢を崩しながらも何とか立て直す。


 一進一退の攻防が続いていた。


「ひいいい!」

「な、何ザンスかあれは!?」

「わ、分からないっしょ!」

「な、何じゃあれは!?」

「理解不能……」

「れ、レーヴェブルクさん!」


 この仮想世界マゴグの民たち――かつてVIに変えられた者たちは、ただただこの状況に怯えている。


 ――……聞いて、マゴグの民の皆さん!


「!? ……え?」


 その時であった。

 そんなVIたちの耳に飛び込んで来たのは、無論青夢の声である。


「だ、誰ザンスか!」

「そ、そうっしょ!」


 ――怖がらないで。私はあなたたちを助けることができます!


「!? な……」


 やはりVIたちは怒るが、青夢のその言葉に驚く。


 助ける? そんなことが本当に?


 ――できます! だから皆さんお願い、私を信じて


 青夢がVIたちを尚も説得しようとした、その時だった。


 ――ふふ……セレクト! 女教皇の選択デッキオブザハイプリーステス(ザ タワー)(ザ ムーン)女教皇(ザ ハイプリーステス)宇宙(ザ ユニバース)! hccps://ioanna.wac/GrimoreMark/、セレクト 女教皇の摩天月楼クイーンズマンスタワー、エグゼキュート!


 ――!? あ、あんた何よ……きゃっ!


「!?? ぎ、ぎゃああ!」


 新たに響いた声は、これまた無論女教皇であり。


 その声により唱えられた術句によって、VIたちは急に視界が歪み――







「……ん? そ、ソー軍曹!」

「……w、what!? どうしてここに?」


 いや、VIたちだけではない。


 仮想世界マゴグで戦いを繰り広げていた米中の決死隊メンバーたちも、現実の第二電使の玉座(スローンズ)内へと強制ログアウトさせられていた。


 ◆◇


「!? あれは……何ですの!?」

「ま、マリアナ様!」

「あ、あれは……?」


 一方、第二電使の玉座(スローンズ)周辺宙域にて米中法機群と共に根源教円盤群と戦っていた凸凹飛行隊法機群だが。


 第二電使の玉座(スローンズ)周囲に突如現れた()()に乗り手たちが驚いたことで、その戦場にいる全ての飛行物体は一旦動きを止め。


 マリアナや法使夏、剣人をはじめとする乗り手たちは、大いに困惑している。


 その突如現れた()()とは。


「あれは円盤群……じゃない!? え、幻獣機が!?」


 なんと第二電使の玉座(スローンズ)周囲には、無数の幻獣機群が現れたのである。


 双頭の巨人のごとき幻獣機(エイドローン)群。

 その姿はまるで――


「あ、あれはミリアのと同じ……幻獣のゴグマゴグ!?」


 法使夏が気づく。


 しかし、その中身は。


「(な、何ザンスかこれは!?)」

「(な、何しょ!?)」

「(これは)」

「(奇々怪々也……)」


 他でもない、あの仮想世界マゴグにいたVIたちであった――

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