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ウィッチエアクラフト〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜魔法の復活編  作者: 朱坂卿
再・第三翔 ヘリ上パーティー襲撃
16/50

#16 豪華客ヘリ上パーティー

「マリアナ様、まだでしょうか?」

「そろそろであってよ……ええ、あれですわ。」

「すっごーい! ねえあれ? あれが豪華客ヘリ!?」

「ま、まあかぐやちゃん落ち着いて!」


 空港へと向かう輸送用法機の中で。


 その空港に止まる、件の客ヘリを見たかぐやが歓声を上げる。


 それは豪華客船の上方部分をそのまま切り出した、ビルのような機体の両側を挟み込むかのように巨大なローター部分が二つ付いた外観をしていた。


「ああ、かぐやさん。もう、一度申し上げましたからご存じかと思いますが……あなたはあのヘリには乗れませんことよ?」

「ええ! いやだいやだ!」

「かぐやちゃん……」


 駄々をこね出したかぐやを、青夢は宥める。


 そう、魔法根源教――凸凹飛行隊は未だに正体を掴めず未知の敵としているが――に狙われているかぐやを、さすがにヘリ上パーティーには連れて行けず。


 かと言って離れた所に放置する訳にも行かず、苦肉の策としてヘリを追うようにあの魔法塔華院コンツェルン保有の揚陸艦を貨物船に偽装して航行させ、そこに彼女とそれを守るための青夢を乗せることにしたのである。


「そして当然ながら……魔女木さん、あなたもあのヘリには乗れませんわ。」

「ええ……そうよね。」

「青夢……」


 マリアナは青夢にも、見ようによっては冷たい言葉を投げかける。


 格好もそれを示す通り、マリアナや法使夏に真白と黒日はドレスを、剣人もタキシードを着ているが、青夢やかぐやは普段着のままである。


「まったく、何を残念みたいな顔してんのよ魔女木! マリアナ様からそこのかぐやさんのお守りっていう仕事をあんたは与えられてんのよ? 感謝されこそすれ、恨まれる覚えはないわね!」

「別にそんな……」


 マリアナに便乗するように声を荒げる法使夏に、青夢は少し戸惑う。


「ちょっと雷魔さん! 青夢にそんな言い方しなくても」

「そうよ!」


 見かねて、真白や黒日は抗議する。


「いいよ、真白も黒日も。かぐやちゃんを近くにいて守るのは元から、この()()()()()からのご命令なんだから、喜んで引き受けるわ。」

「青夢……」

「ふん……分かっているじゃないの、魔女木!」


 青夢はそんな二人を宥めるように言う。


 法使夏は青夢の言葉に棘を感じないでもなかったが、ここでは敢えて問題にしなかった。


 ◆◇


「まったく……何でしょうね、相変わらずの魔女木のあの態度! 法機も使えないなんて、本来なら飛行隊自体クビになってもおかしくないのに、マリアナ様は仕事を与えてやってくださっているのに!」


 空港にて。


 輸送用法機から降りて機体や真白・黒日から離れた所で、法使夏は近くにいたマリアナにそう言う。


「よくってよ、雷魔さん。魔女木さんは所詮ああいう形でしか会話のできない人なんだから!」

「ええ、同感です!」

「はあ……まったく、お前たちは!」

「あら……何か言いたげであってね、ミスター方幻術?」


 そんなマリアナと法使夏を見かねて、剣人は口を挟む。


「相変わらずなのはお前たちもだよ、と俺は言いたいんだよ魔法塔華院に雷魔……お前たちこそ、魔女木にそんな口しか聞けないからいつも喧嘩になるんだろ!」

「! ……な、何よ……私やマリアナ様に文句がある訳……?」


 思わぬ口撃に、法使夏はややたじろぎながら反論する。


「……ああ、そうさ。俺は立場上言えることはここまでだし、言いたいこともこれが全てだから、もうこれ以上は言わない。」

「あんた……喧嘩売っといてもう尻尾巻こうっての?」


 しかし剣人は早くに矛を収めたため、少し拍子抜けしたこともあって法使夏はまた語気を強めるが。


「雷魔さん、その程度におし!」

「……はい、マリアナ様。」


 マリアナはそれを宥める。


「……ミスター方幻術。わたくしたちは何も、彼女と喧嘩したい訳ではなくってよ。ただ、ひとえに彼女が喧嘩腰であるからこそ、こうなってしまうのですわ。」

「そ、そうよ! あんたもあんただわ……いつもいつも魔女木の肩ばっかり持って!」

「ああ、そうか……お前たちの気持ちは分かった。」

「もう……待ちなさいよ方幻術!」


 マリアナと法使夏の言葉に、剣人は少し気まずい様子で彼女たちに背を向けて先にヘリへと向かう。


「まったくあいつは……いい加減あの態度、どうにかならないんですかねマリアナ様! あいつといい飯綱法の御曹司といい……元魔男て奴は本当に!」

「雷魔さん、あなたこそいい加減覚えなさい。わたくしがそんな些事を気にする質ではないということを!」

「はい……すみませんマリアナ様。」


 またマリアナを庇ったつもりが、これまた相変わらず窘められてしまう法使夏であった。


「(まったく、まあ雷魔さんの言うことはあながち間違いではなくってよね……ミスター方幻術と言い、皆魔女木さんばかり! まだわたくしの飛行隊長としての威厳を示せていないのかしら……)」


 こちらも相変わらず、悩んでしまうマリアナであった。


 ◆◇


「すごい……色んな方がいますね、マリアナ様!」

「そりゃそうでしょうね、これはようやく動き出す魔法塔華院コンツェルンの一大プロジェクトの発表の場も兼ねていますわ。」

「うーむ……」

「す、すごい! あの人も財界の著名人よ!」

「うわ……あたしたちの場違い感すごいわ……」


 そうして客ヘリは飛び立ち。

 中で宴会が催され始め、凸凹飛行隊もそわそわする。


 中はホテルの一室と見まごう、シャンデリアや絵画で飾られた贅を尽くした空間であった。


 更にそこにいるのは、今真白の弁にもあったように財界の著名人などとくれば、真白や黒日がそわそわしているのも納得のことであった。


「そして。これは、再三言っておいたことではありますが……ここでの主役はわたくしであってよ、であれば! わたくしの部下であるあなた方は、何卒はしゃいで恥を掻かせるようなことはなさいませぬよう!」

「そうよそうよ! あんたたちくれぐれも、しゃんとしてなさい!」

「あ、ああ分かっている……」

「わ、分かっているわよ!」


 マリアナが釘を刺し、他のメンバーたちは慌てて居住まいを正す。


「……さあ、わたくしたちもお酒とお食事の時間ですわ。とはいえ、敵襲を考慮してドリンクにアルコールはご法度。その他食べすぎには気をつけること!」

「あんたたち、本当にいいわね?」

「応!」

「大丈夫!!」


 そうして、マリアナが最後に釘を刺すや否や。

 凸凹飛行隊メンバーは、歩き出す。


 関係者たちに対する挨拶と、飲食のために。


「おお! これはこれは、魔法塔華院のお嬢さん。」

「お久しぶりですわ、アングロ造船所の会長。」


 無論、関係者たちへの挨拶を担うのはほとんどがマリアナである。


好久不见(お久しぶり)、魔法塔華院の女公子(ご令嬢)!」

「! あら……お久しぶりですわ、ミス(マー)にミス(キー)。」


 そうした関係者の中には、かつて共に戦った中国軍保有の強力な法機の魔女たる、麻鬼苺(マーグイメイ)姫女夭(キーヌーヤオ)もいた。


「ご招待いただきまして、謝謝(シェシェ)。」

「いえいえ、こちらこそお越しいただきありがとうございます。……風の噂にお聞きしましたが、中国ではすでに宇宙開発に着手されているとか。」

「! ま、マリアナ様……」

「! ……您耳朵长(耳が早いわね)(ええ)、まだまだ着手したばかりですが。」


 ふとマリアナが投げかけた言葉に、法使夏はややハラハラした様子であり、鬼苺の顔も少し引き攣る。


 マリアナも我ながら挑戦的な話しかけ方だなと思いつつも、反応を見る意味もこめて敢えてこう話しかけたのだった。


「OH、It’s been a while(お久しぶり)! Mahotokein Konzernの皆さん!」

「! あら……こちらこそ、It’s been a while. Mr&Mrs.So!」

「! 好久不见(お久しぶり)。」

「Well、あなたたちともIt’s been a whileだね! Ms.Ma、Ms.Nu.」


 そんなピリピリした空気を、変えるかのように。


 マリアナや法使夏に声をかけて来たのは、アメリカ軍所属でこちらもかつて共闘したデイヴィッド・R・Y・ソーとマーガレット・I・C・ソー(旧姓フォスター)の夫妻だった。


「Well、I'm sorry、Ms.Mahotokein! この前アメリカに来ていただけたのに、僕が不在で。」

「いえいえ、No problemですわミスターソー! わたくしたちこそ、アメリカから大事なお荷物を分けていただけたおかげで日本は助かりますわ。」


 マリアナは先ほどとは打ってかわり、にこやかに接する。

 それぞれとの関係性の違いが、よく現れているとも言えるがさておき。


「Well……Ms.Mamekiもお元気かい?」

「! ……ええ、ここには来ておりませんが元気ですわ。」


 そこでふとデイヴ――デイヴィッドの愛称だ――が耳打ちするようにそう言い、マリアナはやや真顔になりながらも答える。


 すぐ近くにいる鬼苺たち――こちらは先の戦いで青夢に悪感情を持っているのは明らかだ――を気遣ってのことなのだろう。


 そう、鬼苺たちのように先の戦いで青夢に悪感情を持つ者たちがいるのも事実であり。


 青夢はあながち、ただの意地悪で会場に連れて来られなかった訳でもないのだ。


「……ええ、皆様。宴もたけなわではございますが、ここで当パーティーの主催である魔法塔華院コンツェルン民間軍事部門凸凹飛行隊隊長にして、同コンツェルン次期社長である魔法塔華院マリアナよりお話がございます!」

「! あら……すみませんわミス麻、ミス姫にミスター&ミセスソー。わたくし、そろそろ行きませんと。」


 と、そこへ。

 このパーティーの目玉とも言える、マリアナによる演説の始まりが告げられた。


 ◆◇


「そろそろ魔法塔華院マリアナの演説タイムかしら……」


 一方、その頃。

 青夢は揚陸艦内から、すぐ近くの上空を行く客ヘリを見上げる。


「あーもう、退屈!」

「かぐやちゃん、もう少しだから! ……そうね、今日こそ何も起こらなきゃいいけど……っ!?」


 青夢はかぐやを宥めつつ、また窓から上空を見て驚く。

 そこには。


 ◆◇


「よし……あれだな、今回の目標は!」


 客ヘリに近づくそれ――青夢が窓から見たものだ――である宙飛ぶ人工魔法円盤スペースフライングリソーサリーの内部で、魔法根源教四騎士団長のうちの一人たるミッキー・フレイヤはほくそ笑む。


「さあ行きな、……hccp://cthugha.frs/、セレクト。炎の吸血鬼(ファイヤーバンパイア)、エグゼキュート!」


 フレイヤは自機たる円盤クトゥグアに命じる。


 かくして新たな戦いは、始まったのだった――

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