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ウィッチエアクラフト〜魔女は空飛ぶ法機に乗る〜魔法の復活編  作者: 朱坂卿
再・第二翔 新兵器護送任務 
15/50

#15 束の間の休息

「たあああ!!」

「ターナーナ!」

「アイイイ!」


 海面より飛び出した円盤型法機二機と、空中で不動を貫く円盤クトゥルフ・クティーラは、攻撃がではなく機体同士が直接迫り合う。


 そのまま敵味方の二種類の機体は物理的に激突する――かに思われた。


「行くよ、ミリア!」

「言われるまでもないわよ!」

「な……くっ、あいつら!」

「あいつら!」


 が、円盤型法機二機は予想外にも、その水流で形成された円盤の外殻から中身の法機が離脱する。


 そして。


「ぐっ!」

「きゃあああ!」

「こいつらああ!」


 法機が脱ぎ捨てた外殻は、そのまま円盤クトゥルフ・クティーラと激突し、泡水流となって広がり次々とその泡たちを爆発させていく。


 先ほどまでと違い、衝撃波の力場という防御幕も展開していなかった円盤は、二機とも直に爆発の被害を受けてしまった。


 ◆◇


「ミリア、やったわ!」

「まだ喜ぶのは早いわよ法使夏! ……さあ、やったかしら?」


 その爆発を遠巻きに見つつ、既にその場を離脱していた法機メーデイアとルサールカは接近し空を並走する。


 爆発は見事に円盤クトゥルフ・クティーラを包み込み、今尚続いている。


 そのまま考えれば、これにより円盤は破砕された――はずであった。


「ふん……舐めんじゃないわよ!」

「ないわよ!」

「!? あれは……円盤が!」

「やはり……中々手強いわね!」


 が、大方の予想通りというべきか。


 爆発の中からやっとの思いでといった有様で、円盤クトゥルフ・クティーラは踊り出る。


 さすがに爆発を直に食らったダメージはなかった訳ではないとばかりに、その軌道はふらついてはいるが、原型は留めていた。


「なあに、心配いらないよミリア!」

「せや、よう持ちこたえたなあ!」

「! 騎士団長、姐様!」


 が、そんな敵の弱った時が好機とばかりに。

 法機キルケとマルタが、戦列に加わった。


「大丈夫か雷魔!」

「雷魔さん!!」

「! 方幻術たち!」


 そこへ凸凹飛行隊の法機クロウリー、法機ディアナ・アラディアも合流する。


「わたくしをお忘れであってはならなくってよ!」

「! マリアナ様!」


 法機カーミラとそれに先導される形で、強襲揚陸艦ウィッチーズアンフィビアアサルトシップもそこへ駆けつける。


「あら……皆さんお揃いで! 他の円盤や三脚空挺戦車トライアドウィッチエアボーンタンクは……お察しくださいと言ったところかしら?」

「かしら? ……た、ターナーナ!」


 円盤クトゥルフ・クティーラよりターナは、ゾロゾロと自機の周りに集まった法機や敵艦を睥睨する。


 まるで瀕死の獲物に群がるコンドルの群れだ――


 ターナはそんな風に敵を見られるほどにはまだ余裕があるが、同時にこれはもはや詰みであることも悟っていた。


「焦らないで、アイ! ……猊下より直々にこの任務を仰せつかった身、最後まで戦うまでよ!」

「ま、までよ!」


 ターナはしかし、またアイをそして自分を鼓舞する。

 そうだ、これは女教皇猊下より任されたこと。


 満身創痍とはいえ、まだ円盤クトゥルフ・クティーラは戦える――


「hccp://cthugha.frs/、セレクト。 ンガイ森炎上(ンガイズディザスター)、エグゼキュート。」

「くっ!?」

「きゃ!」

「ぐっ!!!」

「え……? これは……?」


 が、その時。


 突如として円盤クトゥルフ・クティーラを取り囲む凸凹飛行隊や元女男の法機群や強襲揚陸艦ウィッチーズアンフィビアアサルトシップは、熱波に見舞われる。


「……ボリー姉妹。猊下から撤退するようご命令、退きな。」

「フレイヤ!? ……くっ、分かったわ……」

「分かったわ……」


 その隙にその現れた円盤クトゥグアからの、そこに座乗する魔法根源教四騎士団長のうちの一人たるミッキー・フレイヤの通信により、ターナとアイはなす術なく撤退する運びとなった。


「ぐっ……ミリア! 敵の円盤たちが撤退していくわ!」

「ええ、そうね……いえ、円盤だけじゃない。あんたたちの揚陸艦に引っ付いてた敵艦もよ!」

「あと一歩だったのに……マリアナ様、申し訳ありません!」


 苦しみ動けない自分たちを尻目にした敵部隊の撤退を、法使夏もミリアも指を咥えて見ているしかなかった――


 ◆◇


 ――……敵部隊、撤退しましたわ。


「そう……よかった……かぐやちゃん、敵はやっつけられたって! もう大丈夫よ!」

「え……や、やったー!」


 その頃、三度揚陸艦内部では。


 かぐやを連れてひとまず格納庫へと向かう途中の廊下で青夢は、艦内放送でそう告げたマリアナの声にひとまず安堵する。


 今回もかぐやを守れた――


「いや、私は何もしてないか……はあ。」

「? 青夢ちゃん?」

「あ、う、ううん。何でもないわ。」


 が、青夢はそこでポロリと本音を漏らす。

 今自身には、戦うどころか法機を呼ぶことすらできない。


 その事実が、彼女の心に重くのしかかっていた。


「(はあ……私、どうすればいいんだろ……とにかく、このままじゃ……)」


 青夢は、忸怩たる想いであった。


 ◆◇


「それ!」

「きゃっ! やったわね、真白!」

「えい!」

「きゃ! ……やったなー、かぐやちゃんも!」


 ハワイのワイキキビーチでは、真白に黒日、青夢にかぐやが水着姿ではしゃいでいた。


 それから数日後。


 魔法塔華院の輸送艦隊は、補給のためハワイに立ち寄っていたが。


 そのビーチで、束の間の休息を楽しむことにしたのであった。


「まったく、相変わらずですわね……休息だというのにあんなにはしゃいでしまっては、ここから先も保たなくってよ!」

「ええ、まったくですねマリアナ様!」


 マリアナと法使夏は、すっかりその様子を見て呆れている。


「いや、お前ら……」

「あら、何か言いたげであってねミスター方幻術?」

「何、あんた?」

「ひいっ! いや、こっちを見るな!」


 剣人は赤面しながら二人から目を逸らす。


 マリアナは柄の派手なビキニでその豊かな身体を惜しげもなく晒しており、また法使夏もパーカーを羽織ってはいるがその下はビキニで、マリアナほどではないが抜群のプロポーションを見せている。


 剣人には眩しく、目のやり場に困る格好である。


 更にマリアナは麦わら帽子とサングラスをかけ、パラソル下に設置したテラスに座り、花やフルーツで彩られトロピカルジュースを飲んでいる。


 もちろん法使夏がその傍らにいる。


 剣人からすれば彼女たちも楽しむ気満々であり、そこもツッコミをしたい気分であった。


 ◆◇


「いいなあ、皆……」


 一方青夢は。

 尚も真白や黒日、かぐやと共に浜辺ではしゃぎながらも、浮かない顔を浮かべていた。


 真白や黒日もビキニで、それなりのプロポーションをしているのに対し、青夢は自身の体型にコンプレックスがありフリル付きのワンピース水着を着ていた。


「青夢ちゃん! なーに浮かない顔してんの!」

「きゃっ! かぐやちゃん!」


 ただ、ワンピースはかぐやも同じであり。

 しかもスレンダーな体型も、これまた同じだった。


「そうよね……ここは楽しんだもん勝ちだし!」

「きゃっ、青夢ちゃん!」

「むっ、青夢!」

「やったなー!」


 青夢はそこで吹っ切れて、かぐやや真白に黒日にも水を浴びせる。


「隙ありや!」

「面白そうだね、あんたたち! 行くよ、ミリア!」

「はい、姐様!」

「きゃっ! あんたたちい!」


 と、そこへ。


 先の戦い後、凸凹飛行隊と同じくハワイに降り立った元女男の騎士団メンバーたちが水鉄砲に三人揃ってビキニ姿で参戦する。


 いわば恩人といえる彼女たちを、マリアナは招待していたのである。


「あたしらも楽しまんとな!」

「そう言うことさ、さあミリア!」

「はい、姐様!」

「きゃっ! 冷たい!!」

「あ、青夢ちゃん!」

「もう……」


 赤音・メアリー・ミリアの水鉄砲による弾幕を真白や黒日、かぐや諸共食らいながらも。


 青夢はその雨のように(というかモロに雨として)降り注ぐ水鉄砲のしぶきの切れ間から、元女男のメンバーたちを見る。


 やはりというべきか、そのビキニに包まれているのはそれなりのプロポーションである。


「もうこうなったらしょうがないわね……喰らええ!」

「うぁっ! やったなあ、このお!」

「生意気よ!」

「ああ、そっちも喰らいなあ!」

「きゃっ!」


 青夢もしかし、こうなれば尚更楽しんだもの勝ちとばかりに海面から水を掬って元女男衆に投げつける。


「み、ミリアも……わ、私も参加したいけどマリアナ様は……」

「あら雷魔さん、別に……わたくしも行きたくないとは言っていなくってよ!」

「え!? ま、マリアナ様その水鉄砲どこから!?」


 それを遠巻きに見ながら行くのにためらいがあった法使夏だが、マリアナはえらく乗り気な様子で水鉄砲を取り出し立ち上がり。


「さあ、遅れたら容赦しなくってよ雷魔さん、ミスター方幻術!」

「は、はいマリアナ様!」

「まったく……魔法塔華院、お前も子供なところあるな!」

「あら、真剣な戦いに子供も大人も関係なくってよ!」


 そのまま軽口を叩きながら、法使夏や剣人の先陣を切り、海の戦場へと走っていくのだった。


 ◆◇


「申し訳ございません、猊下!」

「猊下!」


 一方戦いの直後、ダークウェブの仮想空間では。

 腕組みする女教皇を前に、ターナとアイが土下座をしていた。


 無論、今回の作戦失敗を詫びてのことである。


「ふん、あれだけ偉そうなことを言ってこのザマとはな! 猊下、何と厚顔無恥な奴らなのでしょうか!」

「あら? あなたこそ。ご自分の失態をお忘れかしら?」

「!? い、いえ……」


 ここぞとばかりにボリー姉妹を批判するスターだが、逆に女教皇に叱責を受けてしまった。


「猊下、僭越ながら……私に次の任務を、お任せください!」

「あらフレイヤ。あなたが次こそは仕留めてくれるというのね?」

「はい!」


 と、そこへフレイヤが進み出た。


「へえ、あなたにできるの?」

「カロアか……私に何か文句でもあるのか?」


 フレイヤにちょっかいをかけるように言うのは四騎士団長の一人である、土の騎士団長の女性コーラル・カロアだ。


「いや、別に。……しかし、女教皇様。私にしてもフレイヤにしても、任せるならばいい加減話していただけませんか? 私たちが崇める"バアル・ゼブブ"様と、地球を狙うという"エリヤ"の"遊星民"について、より詳しく。」

「!? カロア貴様……女教皇様に要求する気か!」


 更に女教皇に質問するカロアに、フレイヤは激昂する。


「ひっ! ターナーナ……」

「だ、大丈夫よアイ!」

「ふん、フレイヤ……お前時折恐ろしいな!」


 これにはターナやアイ、スターもやや怯える。


「……すまない。」

「……そうね、フレイヤ。女教皇様、無礼をお許しください。」

「いいわ、カロア。そうね、あなたたちにも詳しく話さないままに任務をさせてしまっていたわね。……ではお話するわ。その話が終わった上で、フレイヤ。あなたに改めて任務を授けます!」

「……はっ、猊下!」


 フレイヤとカロアは詫び、それに対して女教皇は語り始めた――


 ◆◇


「はーあ、つかれたー! でも、皆で遊ぶと楽しいね!」

「はあ、はあ……そ、そうでしょかぐやちゃん!」


 その頃、夜となったハワイでは。


 ホテルのラウンジで、青夢・かぐや・真白・黒日はトロピカルドリンクを飲んでいた。


「そう言えば、かぐやちゃんには初のハワイだったよね?」

「ねー! かぐやちゃん楽しそうでよかった!」

「うん、とっても楽しー!」


 真白と黒日の言葉に、かぐやは破顔する。


「かぐやちゃんが楽しかったならよかった!」

「うんうん。 ……ところで、そこの方幻術君も雷魔さんもこっちに来ればいいんじゃない?」


 と、真白と黒日は離れたところに座り同じくドリンクを飲む法使夏と剣人に告げる。


「い、いや俺はいい! 女同士で楽しめばいいさ。……ほら雷魔、お前は」

「私もいいわよ! ……ミリアも帰っちゃったし、マリアナ様もいらしてないし。」


 剣人はそう言い、彼に水を向けられた法使夏も断る。

 どこか少し疲れた様子だ。


「マリアナ様……」


 法使夏はホテル内自室にいるマリアナに思いを馳せる。


 ◆◇


「マリアナさん、ご報告ありがとう……ただ。本日は本当にお疲れのご様子ね?」

「い、いえ滅相もございませんわお母様!」


 その頃マリアナは、自室で母にオンラインでモニター越しに報告を上げていた。


 マリアナも先のハワイ近海での戦いと、昼間のはしゃぎようから来る疲労の色は隠し切れていなかった。


「いえ、まあ当然のことよ。……とはいえ、早く日本にお帰りになってねマリアナさん。まもなく私たちは、宇宙にまた行くのですから。」

「は、はい! ……え!? う、宇宙に、ですか?」


 マリアナはしかし、この母の言葉には目が醒める。

 宇宙に、また?


「ええ、そろそろあのネメシス星――第二電使の玉座(スローンズ)に眠るVIの皆さんを救済するプロジェクトを発足しなくては! そのためにはマリアナさん、謎の敵から奪ったという例のデータ――あなたがさきほど送ってくださったデータも役に立ちそうですわ。」

「ネメシス星に……何と! あ、はいありがたいお言葉……」


 マリアナは母の言葉を更に驚きながら聞いていた。

 ネメシス星に再び行くためのプロジェクトとは。


 ちなみに謎の敵から奪ったデータとは、先のターナとアイとの戦いで法使夏・ミリアが自機に合体させた分身円盤たちのデータのことである。


 法使夏たちは戦いのさなか、マリアナの法機カーミラと通信を接続しており、マリアナはその際に分身円盤たちを解析してデータを奪っていたのだった。


「そのプロジェクトのためのお披露目パーティーを開催します!」

「は、はいお母様!」


 マリアナは頭を下げる。

 プロジェクトのお披露目パーティー。


 それがどんな波乱を呼ぶかは、未だ神のみぞ知る――

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