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記憶
学校に着くと、聡明はもういた。
「やっと来たか!遅くね?」
「ごめん、途中から歩いてた。」
「まぁいいけど。」
聡明は、スクールバッグからまた新しいファイルを持ってきては各席に配り歩いていた。
「ありがとう。」
「別のいいけどよ。時間見て配んねぇともうやべぇよ。」
「確かに。ごめん、急ぐ。」
「あと、付箋取れてんのあるから。そこは気ぃつけて。」
「おう。ありがとな。」
聡明は五分もすると配り終えてしまった。
完全に聡明の分は無い。
それでいて、俺のスクールバッグから勝手にファイルを取りだして配り歩いている。
聡明は勘が良くて鋭い。
だからその分気が回るんだと思う。
そのおかげもあって俺は無事に配り終えた。
「ありがとう。」
「いいよ別に。」
その後、各学級委員に説明を伝えて、無事になんとか今日の作業は完遂した。
帰り道、一人で歩く俺を後ろから追いかけてきた聡明はふとこう言い出した。
「お前知ってるか知らないから教えとくと、今度の月曜、高嶋の誕生日だぜ。」
「あ。そうだ。」
一月二十日。高嶋の誕生日だ。
卒業祭の事ですっかり忘れていた。