洞察
「あ、ありがと。」
こめかみを伝う汗。
聡明からチラチラ見られている。
分かるんだ、視線っていうのは、じわじわ伝わる熱みたいな物で、多分、見られている。
気まずい空気が俺だけに流れていた。
俺は全てを飲み込むために一度携帯を手に取った。
ロック画面で通知を確認する。
me'inからの通知で、高嶋からだった。
俺の心臓は跳ね上がった。
まるで二日越しに餌を与えてもらう犬みたいだ。
高嶋:今年のお花見、どうするの? 他一件
俺は聡明の目を気にした。
また気恥しいことを言われると思った。
でも、違う。
俺はこのメールで安心した。
普段から毎年俺ん家は花見に行く。
家族総出で、近所の川沿いの桜が綺麗に咲く公園に行って、その時に高嶋の家族も誘うのだ。
きっとこの質問をするのに、いつメールをしようかと悩んだ末に俺を見てきたのだろう。
俺は文字を入力していく。
「知らないけど、今年も行くんじゃないかな。」
直ぐに既読がつく。
「そっか。ありがとう。」
俺は携帯の電源を切ってまたポケットにしまう。
すると聡明が「うわぁあああ」
と呻き声を上げた。
少しドキッとした。
高嶋と連絡を裏でとっていた事が聡明にバレたら茶化されて、好きなんだろとからかわれるからだ。
「どうした?」
何かを隠すみたいに俺が言う。
高嶋も携帯を消して立ち上がった。
「なんかお菓子とかあるか見てくるね。」
「おおお!ありがとぉ、丁度腹が減ったところだったんだよぉ、、」
聡明は机にだらけて、左手を伸ばし腕枕をしている。




