意気地無し
「これ、いつ署名集めんの?」
教室の黒板には、一月十七日とある。
教室はすっかり冷え込み、床の冷たさは足の裏からシンシンと感じる。
「そうだな。開催は二月の下旬にしたいから、それまでの準備期間を一ヶ月として、署名集めるのは今週中には終わらせたいな。」
「でもお前、この大量のプリント、どうやって一週間で配り歩くんだよ。」
「それはもう考えてある。」
「あのなぁ、そういう事じゃなくて、、」
「先生に見つからずにって事だろ?」
「ああ、そうだよ。署名集める前から先生に見つかって、入試があるのにそんなことしてるってバレたら全部チャラだぞ?」
「だから、こうしよう。
各クラスにいる学級委員に話を通して、朝先生が来る前にそれぞれの机の中にプリントを配ってもらう。
そのプリント一つ一つに、付箋なりなんなりを貼ったりして、これは先生には言わずに、記入し次第学級委員に提出すること。っていうのをかこう。」
「あー。各クラスにいる偉いやつらならってことか。」
「あぁ。」
「でもよ。なんで付箋なんかすんだよ。」
「え、だから、」
「それなら最初からプリントに書けば良かったじゃんかよ。」
「あっ、、、確かに、、」
桐谷はきょとんとした目でこちらを見つめる。
少し間が空くと、ぷっはははと吹き出した。
「まぁいいや!一緒に書こうぜ!」
「あぁ。ありがと、な」
何となく気恥ずかしかったからか、ありがとうという言葉に違和感を感じて、ありがとなと、妙に格好を付けた言葉使いになってしまう。
「ふつーにやばくね?」
「まぁ誰もこんなのの在庫なんて覚えてねぇだろ。」
「ちげぇよ、それもだけど、俺ら勝手に事務室入ってんだぜ?」
「まぁ、大丈夫だろ。」
学校の事務室に潜入して、積み上がった三百枚付箋を見つける。
遠くから足音が聞こえて聡明は目を見開きながら俺を見る。
「やばいって、」
小声でいう聡明。
「お前って意外と意気地無しなんだな。」




