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無価値への回帰
あれからの日々はあまりに怖かった。
どんどん忘れられていく。
きっと俺らは、どんどん離れていく。
俺から離れ、俺への興味は消え、俺は無価値へと帰る。
どうしようもない時間の進行が、それを加速させているようにも思えた。
受け入れるしかないと思った。
だからこそ俺は、それもどんどん受け入れるようになっていったかと思っていた。
でも自然と、俺はこう思うようになっていた。
「最後に、何か大きいイベントを開きたい。」
それがあれば俺は、忘れられないとでも思ったのか。
覚えてもらえると思ったのか。
俺は聡明に相談して、「卒業祭」を企画した。
卒業するから、と署名を貰って、三年生のみで小さな文化祭のようなものを開こうと思った。
それの発起者が俺となれば忘れられないと思ったのか。
高嶋や月形、桐谷とのグループチャットでは文化祭の写真が送られていた。
そこに、俺はいなかった。
皆は笑っているのに、俺はいない。
まだ入院していた時、病床でそれを見て、俺は不安に駆られた。
こうして、記録にも残らない俺は、人の記憶という不確かな物に映り込めるわけが無いと思った。
悔しかった。