衝撃に殴られた頭
今日の思い出は、何も覚えていない。
それも全部聡明のおかげだ。
まさに今聡明が口に出した言葉が、頭を回り続ける。
「俺さ、引っ越すんだよね。」
油絵を専攻とした学校に行きたいらしい聡明は、遠くの地方へ引っ越してしまうらしい。
「まぁそん時は連絡ちょこちょこ取るわ。」
納得が出来ない。
なんでそういう大事な事をこの場所で言ったのだろう。
今日乗ったジェットコースターも、落としたポップコーンも、男だけのお化け屋敷だって、聡明の引っ越しには敵わない。
確かに美術の授業では、家に持ち帰り作品を仕上げてくる程絵への愛は感じられた。
ただ、ここまでとは思わなかった。
しかし聡明の言う通りだ、また連絡を取ればいい。
いや、違う。
俺の中で大きく物事を左右することがあった。
それは、どうしてもだ。
何をしても、何を見ても、きっと俺は忘れられると感じる。
「人はいずれ忘れる生き物でしょう?」なんていった有名作家を俺は許さない。
確かにもっともである。
人はいずれ忘れるし、ものはいずれ壊れる。
でも、どうしても自分には、何にも変えられない劣等感のようなものがあった。
それが化け物みたいに住み着いて、動かなかった。




