優しい父さん
親に捨てられた事に嬉しさを感じた僕は、親が居ないと何も出来ない事を目の当たりにして不甲斐なさを感じた、どうしようも無いやるせなさを感じた。
そして、また泣いた。
外の冷たさが畳を伝って体に流れてくる。
僕は自室で倒れるように寝ていた。
起きたのは警察の突入でだった。
急いで窓から逃げ出して、広い庭の塀を乗り越えて、隣の家の裏に隠れる。
蜘蛛の巣が満面に貼られていたけど、気にしていられなかった。
しばらくして警察が帰ったのを見て僕も家に戻った。
家の中のものがぐちゃぐちゃになっていた。
さっきまで家の中から聞こえた警察の出した音を吸い込んだ家の物は、静まり返って、僕の心の虚しさが際立つ。
僕はただ打ちひしがれて、裸足で庭に出た。
庭には大きな池があって、鯉が何匹もいる。
それをひたすら眺めた。
文字じゃないものを、興味の引くまま眺められるのは幸せだ。
あぁ。いいなぁ。
しばらく眺めて、寒くなって家に戻るとまた誰かが来た。
次は逃げられなかった。
散らかったリビングのコタツで暖まっていたから、逃げるのが間に合わなかった。
やばい。捕まる。
と思うと、「さっむ」とお父さんの声が聞こえた。
そして、僕の名前を呼んだ。
僕はお父さんの所に行くと、頭を撫でられて、お前よく生きのびたなぁ!と褒めてもらった。
流石だな。と僕の頭を力の加減もせずにわしゃわしゃ掻き立てると、僕に聞いた。
「学校が変わるのが嫌なんか?」
「えっ、」
「そうだろ。」
「、、、うん。」
「よし、わかった。それならいいことを教えてやる。」
「え?」




