遠来
遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
大林は立ち上がり逃げた。
藤野さんが電話してくれていたからだ。
俺は散らかった商品を回収する。
藤野さんはさっきの女性のお会計を済ませる。
「お騒がせして申し訳ありません。」と一言付け加えて。
パトカーが店舗の入口に止まり、警察が入ってくる。
俺は何故か危機感を覚えた。
その場から逃げ出したいような、なにかやましいことがあるような。
気づけば俺の性だ。
なのに店長が取り調べを受けている。
しかし店長の手の甲についた大林の引っ掻き傷は、店としての刑事事件ではなく、個人の民事にも引っかかるらしく、二人来た中の一人は大林を探しに、一人は店長を被害者として取り調べを続けている。
藤野さんは一度店舗の営業を停止するべきと判断し、シャッターを途中までおろした。
店長の取り調べは二時間に及んだ。
監視カメラを見てもらえれば早いと言って店長は追い払おうとしたが、事情聴取と、証人の俺と藤野の存在も重要だということで俺と藤野さんは待機させられ、一人ずつ事情聴取を受けるらしい。
シャッターを途中まで下ろしてから十分くらいが経った頃にもう二人の警察が来た。