矛盾
「お前が使えねぇから店側は切ってんの。なぁ分かる?
お前なんの仕事したんだよ。何?店でいつまでも携帯触ってゲームして?それが仕事なん?甘えた仕事やなおい。」
こんな状況でも客は入ってくる。
入ってきた女性が驚いた様子で奥の商品コーナーに逃げるように移動する。
大林は少し脅えているようすだった。
少し離れたところから見ているおかげで、張り付いた空気感を感じるが、少しは冷静になれる。
大林は仕事をしなかったのにクビにされたのを俺の性にしていたこと。
それは俺が入院したことで人手不足が慢性的になり、大林の仕事への姿勢が露呈したから、ということ。
そして今店長は俺の為にここまでしてくれているということ。
しかしどうしても店長には感謝できないでいる。
大林のことを告発しようとした時に、言われた言葉を覚えている。
―あー、君の言いたいことはわかるよ。でもね、人の揚げ足取ってても仕事は進まないよ。―
今の店長が何を言おうと、俺に刺さらないのはこれがあまりにも脳裏に焼き付いて居たから。
どんなに守って貰おうと、店長の発するその一語一句が、脳裏のそれをより焼き付ける。
店長は思う存分捲し立てたのか、「くそが。」というなり立ち上がった。




