お互い様
店長は形相を変えて、大林の胸ぐらを掴む
藤野さんは従業員用の入口を開けながら電話をしている。
店長に負けじと大林も店長に突っかかる。
「ノコノコ来てなんだよ。あ?」
「なんだよじゃねぇよ。俺はこいつに用あって来てんだよ。」
と大林は俺を指さす。
「だから要件を言えっつってんだよ。」
「お前がきいてどうすんだよごら。」
二人が胸ぐらを掴みあげ合う。
俺は、正直分からなかった。
何故ここまで怒っているのか。
俺の性で仕事が無くなったとはどういうことか。
本人が仕事をしなかったからという理由でなかったのか?
「俺はこいつの性で手に職無くなってんだよごら」
「どの口が言ってんだよ。あ?仕事しなかったんお前やろが。」
「だから、こいつが休んだから俺が働くことになったっつってんだけど。考えてくれる?」
俺は、明らかに言い分がおかしいのだなと思った。
「んだよてめぇ話んなんねぇな。」
店長がそう言うと、いつしか店長に掴まれた腕を服から離そうと引っ張っていた大林は
「離せよてめぇ、服伸びんだろ。」と理不尽に怒る。
舌打ちをして店長は手を離した。
重心を後ろに置いて思い切り引っ張っていた大林は、店長が手を離すと後ろに尻もちをついた。
レジ横のガム、キャンディなどの携帯菓子コーナーの展示が倒れ、地面に散らばる。
店長は転んだ大林の上に跨り、捲し立てた。