文句
携帯のアラームの音で起きる。
あまり寝れていないな、と思いながらもバイトの準備に取り掛かる。
寝癖を直して、夜ご飯を食べて歯を磨く。
それから服を着るのだが、今日は珍しいことに、父さんがリビングのソファに居ない。
毎日リビングのソファで寝ているのに、今日は一緒に寝たんだな。と少し俺が恥ずかしい気持ちになるのは年頃だから。というものだろう。
俺は着替えて家を出る。
家の前の道路には街灯が並ぶ。
しかし、夜の闇は深いらしく、街灯じゃ照らしきらない影が存在する。
俺はその影に立つたび、後ろを振り返ったり、周囲に注意を払った。
正直怖かった。
あの電話とあの場所から、もう暗闇に一人で入れないようにすらなっていた。
それで終電に乗って駅前まで行く。
バイト先の一○○均ショップに着くと、従業員入口から入る。
俺が空いているレジに付くと客が流れ出す。
レジのボタンは埃を被っていた。
客を流しきって、誰も店内に居なくなると、前に並んだレジの女性はこっちを向いて、「久しぶり。」といった。
「お久しぶりです。ご迷惑をお掛けしました。」
「いやいや。すごいね。久しぶりのレジなのに完璧だよ。」
「慣れてますから。」と笑うと
客が入ってきた。
「いらっしゃいませー!」
見覚えがあった。
大林だ。
大林はキョロキョロ辺りを見回すなり俺を見つけて、真っ直ぐ進んでくる。
歩速はあまり早くないが、気づけば目の前にいた。
「おい。さっきはよくも電話切ってくれたな。」
「すみません。あれは、、、」
「あれは、ちゃうねん。おい。ねぼけてんか?あ?」
前の女性の名前は藤野というようで初めて名前を知ったが、藤野はスタッフルームに走っていった。
俺は一人だ。
「おい聞いてんの?」
「はい。何を言おうとしてたんですか?」
「お前のせいで俺の仕事なくなってんねん。なぁ。どないすんの?」
「すみません。僕がいない間ありがとうございます。」
「ちげぇっておい。てめぇ理解してんの?なぁ」
藤野は店長を連れてスタッフルームから出てきた。
店長は「久しぶり大林くん!」という。
「久しぶりじゃねぇよこのデブ。」
「あ?」