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前兆
カウンター席しかないこの店の端の方に俺と父さんは座ったが、入口付近は、作業着の男らが座っていた。
父さんは食べるのが少し遅いほうだが、待っていた。
嫌な気持ちはしなかったし、少し嬉しかった。
キッチンでの、湯切りをする音や餃子を焼く音などの中、俺らは黙っていたが、その沈黙を刺すように俺の携帯がなり続けていた事に気づく。
俺は急いで携帯を手に持つと外まで少し走って電話に出る。
うろうろしながら人の邪魔にならない場所を探して、路地のような場所で携帯を握っていた。
「もしもし。」
「おう。お前いつから入んの?」