レポート
懐かしいな。
昔から母さんは優しかった。
俺は目玉焼きとごま塩がかかった白米を食べ終えて、自室に戻る。
あ、その前に。
「母さん、美味しかったよ。ありがとう。」
「ふふ、急に何よ。」
「なんでもないよ、ただ何となく言っただけ。」
俺を助けてくれたあの時からお礼を言えていなかった。
それが今になって気がかりになってしまって、ありがとうを言わないという選択肢はなかった。
明後日からはバイトにまた戻る。
シフトが深夜だから生活リズムを壊さないとな。
一週間後、学校に行ったら俺はなんと言われるだろう。
やはり中学生の記憶は脳に焼き付いて取れないようで、今でも時々怖くなる。
しかし今は違うのは、俺は休める場所を見つけた。
国立庭園、あれは俺をかなり助けてくれた。
明後日に備え今日から生活リズムを考えなくてはいけないし、明日から壊さなくてはいけない。
今は朝で、そうか、十八時か十九時くらいには寝て夜中起きるんだ。
俺は入院で失った記憶を取り戻しつつある。
失ったといってもそんなに大それたものでは無いが、いくつか忘れてしまっていたり、うろ覚えだったものがある。
さぁこれから何をしようか。暇だ。とはならない。
俺は高校生なのでレポートの提出が必須なのだ。
今まで溜まったぶんのツケが回ってきている。
ツケておいてくれた学校に優しさを感じる、だがそれ以上に物量の多さに理不尽ながら憎しみを覚えた。
俺はレポートに取り掛かった。
母さんもそれを知ってか、一切話しかけて来なかった。




