chapter:2-2
掘り下げが間に合ってない……。
妖精の噂話はこの学校中に知れ渡っているらしく、ミシェルが部屋を出て校内を少し歩くだけで、ディーナが話した妖精の話をしている生徒を何人か見かけた。
ディーナから聞いた話と異なる点と言えば妖精の正体についてだ。どこからそんな尾鰭がついたのかはわからないが、その妖精はこの世界の守り神だとか、過去にヴァイラミーに殺された怨念だとか荒唐無稽な設定が追加されていたのである。
馬鹿馬鹿しい噂だ。話が聞こえる度にミシェルは心のどこかで苛立ちを感じていた。そんな噂を信用してどうする。仮にその妖精が実在するとしても、ヴァイラミーが存在しなくなったわけではない。ならば一人でも多くの人を守れるよう、噂話をするよりも自身を成長させるために勉強やらトレーニングをするべきではないだろうか。そう彼女は感じていた。
しかし、そこまで考えてから彼女は気がついた。何故自分は、こんな噂を異常なまで気にしているのだろう。他愛もない噂を流せないほど、自分の精神は成長していなかったのだろうか。
こういうことで苛立ちを覚えるのは良くないなと感じ、一人心の中で反省をしたミシェルは目的の職員室へとたどり着く。数名の慌ただしく動く教師たちの間を縫って、彼女は担任の教師の机へと向かうのだった。