chapter:1-5
とりあえず短めでも更新できそうならば頻度を増やしてみます。
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誰もが寝静まる夜の中、一人の少女が目を覚ました。同室で眠る人間を起こさぬよう、少女は静かに寝巻きから修道服に着替えて部屋を出る。
少女に与えられた私室を抜けると、見えるのは神像が飾られている大聖堂だ。全てを許してもらえそうな神様の石像の前に跪き、以前教えてもらった祈りの言葉を呟いていると、どこかの扉がギィと音を立てながら開かれた。
「おやロール。おでかけですか」
部屋から出てきたのはこの教会の主、神父だった。彼は夜中に起こされた身であるにも関わらず、にこやかな笑みを浮かべて少女を見る。
「すみません、起こしましたか」
「えぇ。夜中に起きるとは感心しませんね。夜は神の目が地上で過ごす我々には届かない時間帯です。危ないことが起きても、神は助けてくれませんよ」
「そうですね。そう教わりました。でも……」
ロールは教会の外の方へと目を向ける。ここは山奥にある小さな村にある教会だ。少なくとも、こんな深夜に遊びに出かける場所などない。ロールが外へと出ようとするのは、自分の中で渦巻く感情を治めるためだった。
「わかっています。『声』が聞こえると言うのでしょう?」
「そうなんです。普段より、ざわざわと」
「えぇ。であれば外に出ることを許可します。そのかわり」
「いつもの約束を守れ、と言うのでしょう」
「はい、その通りです」
「わかってます」
一度神父に目を向けて笑みを浮かべたロールは、すぐに教会の扉を開けて森の方へと飛びだした。
誰も目を覚ましていない教会の中で、唯一起きている神父がボヤキを放つ。
「……彼女の行動だけは、どうも治りませんね」
ベッドへ戻ろうかと思った神父だったが、出迎えがあった方が良いかと思い、少女の帰りを一晩待つのであった。