chapter3-22
「大きな建物ですねー……」
校内に入ったロールは呆けた顔でそう呟いた。彼女曰く、教会以外の建物を見たことがないとのことなので、数百人もの人数を収納できるこの学校は彼女にとって未知の存在なのだろう。部屋の一つ一つに目を輝かせるロールを見て、先導しているミシェルはクスッと笑った。
「呑気なものだ。どいつもこいつも」
車内にいる時から、ずっとロールに銃を突きつけているディーナがそう呟いた。ロールがまだ安全な存在だとわからない以上は警戒するしかないというのに、班のメンバーで気を張っているのはディーナとマオだけだ。
「長時間の運転は疲れますわね……」
いや、くたびれた様子のマオは警戒などしていない。今この場でやるべきことをやっているのはディーナだけだった。
様々な施設があるこの学校の中には、ヴァイラミーの生体を研究するための施設もある。生徒だけでなく外部の人間も利用するような本格的な設備が整っており、ヴァイラミーの討伐に教師や生徒が出払っている今でも、数人は研究員が残っているはずだ。その研究室にたどり着いたミシェルたちは扉を開けて中に入り、顕微鏡を除いている男に声をかける。
「シューツさん」
「むっ」
メガネをかけた細身の男が振り返る。ボサボサの髪、ヨレヨレの白衣。外見を全く気にしない彼は、ロールの姿を見て目を輝かせた。




