chapter3-21
12月中には一区切りつきます。
つけます。
「……わかりました」
無線でのやり取りを終えたミシェルは機械を止めた。その様子を見ていた班員たちは、担任の教師が何を言っていたのかを聞き出そうとしてミシェルを問い詰める。
「何を言っていた?」
「はぐれヴァイラミーは恐らくロールが倒した個体なのではないか、ということだ。少なくともあの後は私たちの後ろで防衛している隊からの連絡はないらしい」
「こいつの対応については?」
「とりあえず学校の研究室に連れて行くのが先決と言われたよ。前線の方々が頑張っているらしい」
「では進路は学校で良いのですのね。案内、頼みますわよ」
マオは助手席に座るミシェルにそう伝えるとアクセルを踏み車を走らせた。コンパスを持ったミシェルは地図を見つつ、後ろの席で再び銃を突きつけられているロールを見る。一歩間違えば死ぬかもしれないその状況であるにも関わらず、彼女は落ち着いた表情をしていた。度胸があるのか、それとも何も考えていないのか、はたまたその程度では死なないという事実からその態度をしているのか。
真実はわからないが、このまま考えていて答えが出るわけでもあるまい。一先ずは担任の言うように彼女を学校へ連れて行くとしよう。ミシェルは後ろにいる少女から目を離した。
「……あのー。ロールさん?」
「はい」
後部座席に座るナコが隣に座るロールに声をかける。この二人がちゃんと会話を交わすのは初めてのことだった。
「ロールさんって、教会ではどういう立場だったんですか?」
「どうって?」
「あ、いや。随分と教会の子どもたちに慕われているみたいだったので」
「お前、今ここでその質問をするのか……?」
銃を突きつけているディーナが半ば呆れながら言う。現状はいわば、得体の知れない力を持っている謎の少女を連行している状況なのだ。あまり楽観的に過ごせる状況ではない。
「でも気になりません? あの教会にいた子たち、みんなわたしたちを目の敵にしてましたよ」
「あぁ、あいつらやたら脛を蹴るのが美味かったな」
「すみません。それ、教えたのわたしです。強くなりたいと皆に言われたので……」
「え、じゃあロールさんのポジションって戦闘指導員みたいな立場だったんですか」
「戦闘指導員がよくわかりませんが……。そうかもしれないです」
戦闘指導員は文字通り、戦闘時にどのように戦えば良いのかを指導してくれる教師たちのことだ。ミシェルたちのクラスではトーセンというシムカの兄である教師がそれに該当していた。彼は軟派なところがある人間だったが、それでも実力は確かだった。先ほどのヴァイラミー戦で、クラスメイトが普通に戦えていたのがその証拠だ。
「……話しているところ悪いですけど、もう見えてきていますわよ?」
「え、早くないですか」
運転をしているマオが言うように、遠方にはミシェルたちが過ごす学校が見えてきた。無線から連絡がないことを考えると、今のところ戦力は足りているのだろう。
ミシェルが無線機をとりイクサへ一報を入れる頃には、学校の近くへとたどり着くことができていた。乗車しているミシェル班のメンバーは車を降り、その中へと向かって行くのだった。




