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chapter3-20

 さて、どうするべきか。

 ミシェルたちは元々、『ヴァイラミーを素手で倒した謎の存在』であるロールを学校へ連れていくことが目的だった。その中でロールがこの神父に挨拶をしたいというから教会に来たのだ。

 しかし、この神父が話したこと、そして先ほど見た景色を考えると、ここでのロールは『一人の少女』として認められている。ならばそのまま、人としてこの場に残しておいた方が良いのではないだろうか――。ミシェルの心は揺れ動いていた。

 幼馴染によく似ている少女が、ここでは無事に、楽しく過ごしている。ならばそれで良いのではないか、と納得しようとしていた。


「ロールのことですが」


 自分自身の心を決めようとしたその時に、神父の言葉が割り込んでくる。ミシェルは顔を扉から神父の方へと向け、穏やかな笑顔を浮かべる彼を見た。


「よければあの子を外に連れてってくれませんか」

「いいんですか?」


 想定外の提案に、ミシェルは思わず問い返す。


「えぇ。ここにいれば彼女は今の生活を続けられるかもしれません。ですが、彼女の使命を知ることはできない」

「使命?」

「彼女が持つ力、彼女だけが聞こえる声。それはきっと、彼女が神から何か使命を与えられたからなのでしょう」


 使命。

 そうなのだろうか。彼女が力を持っているのはそんな崇高な理由があるからなのだろうか。

 ミシェルにはその考えが理解できなかったものの、ここにいればロールの過去を知ることができないのは事実だ。ロールには平和に過ごしてほしいという思いもあるが、自分と過ごしていた時のことを思い出してほしいという気持ちもある。学校に戻って身体検査などを行えば何かがわかるかもしれない。

 彼女の平穏を崩すことを思うと心が痛むが、彼女自身もミシェル班について行くことを了承したのだ。ここは彼女の判断と、神父の後押しに甘えさせてもらおう。


「ありがとうございます。悪いようにはしないと約束します」

「えぇ。偶に顔を出してくだされば、他の子達も納得すると思いますよ」

「そうさせていただきます」

 

 部屋を出たミシェルは班員を蹴り続けている子どもたちに挨拶をし、その班員とロールを連れ、再び車に乗りこんだ。

 目的地は学校。――いや、一旦はイクサの元へと戻るべきか。助手席に座るミシェルは無線機をとり、担任へとするのだった。

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