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chapter3-18

「……あっ、見えてきました」


 数十分の沈黙を破ったのは目的地を示すロールの声だった。そのまま話が拡張することはなく、教会の前に車を停めて五人は中へと入っていく。


「おや、どなたでしょう……。え、どうしたのですか?」


 重厚な扉を開け、聖堂で出迎えてくれたのはここの教会に住んでいる神父だった。ここに住んでいる少女が銃を突きつけられているのを見て、彼はわかりやすく狼狽えていた。


「ただいま戻りました、神父様」

「あんたがこいつの親か?」

「ロールの過去について教えてください!」

「と、とりあえず神様にお祈りさせてください」

「一休みさせてくださいませ……」

「すみません、一人ずつ話してもらえますか」


 神父はロールの親ではないと伝えると、神像の前にナコを立たせ、マオに対して椅子に座るよう促し、ミシェルとディーナを別室に来るように呼びかけた。ディーナはロールの監視をするために移動せずに聖堂へ残ることになったため、ミシェルだけが別室へ移動する。

 部屋に用意されていた一人用の椅子にミシェルと神父はそれぞれ腰掛け、神父の方がふぅと一呼吸する。そして彼はその皺だらけの顔を更に歪めて笑みを浮かべ、こう言った。


「貴方は記憶をなくす前のロールを知っている方ですね?」


 ミシェルの体が強張る。酷く動揺したためだ。

 何故、どうして。ミシェルと神父は初対面のはずだ。それに、話した言葉だって先ほど伝えた『ロールの過去を教えて欲しい』だけである。一瞬、ロールが自分のことだけを覚えていたのかと甘い妄想が頭の中に広がるものの、ロール自身がミシェルのことを知らないというのだからありえない。

 まさかこの人、読心術でも使えるのか? と身構えるミシェルを見て神父は優しい笑みを浮かべてこう答えた。


「わかりますよ。わざわざ外から彼女のことを尋ねにくる人なんて、関係者しかいないでしょう?」

 

 ……言われてみればその通りだった。単純で簡単な種明かしを聞いてミシェルは胸を撫で下ろすとともに、こんな単純なことにも気が付かない自分は本当に冷静な判断ができていないんだなと、自分自身に呆れてしまった。

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