chapter3-17
車の中には奇妙な沈黙が流れていた。運転を務めるのはマオ。助手席にはナコ。後部座席の端には未だ手首が結ばれているミシェルとその相方ディーナで、間にロールが挟まれている。
「ディーナ、彼女に傷はつけるなよ」
「はいはい、気をつけているつもりだ」
ディーナの銃は未だにロールのこめかみを突きつけている。反抗的な態度を見せた場合にすぐに対処するためだが、ミシェルはそれを良しとしていなかった。よほどこのロールという少女が、過去に失った幼馴染に似ているようだな。と銃を握るディーナは心の中で呆れていた。
マオはロールが示した方向に向かって車を運転させる。ロールが通ってきた道を通ることができれば良かったのだが、どうやら彼女がが通ってきた道は舗装されていない草木が生い茂っていた場所のようだった。身体能力が異常なロール一人ならともかく、ミシェル班の四人がそのような道を歩き続けるのは時間がかかるだろうとのことで、一度引き返してから車で教会まで向かうということになったのだ。
「……ところで、彼女の正体についてはどうお考えですの?」
と、運転席にいるマオはハンドルを指でトントンと突っつきながら、後部座席に座る二人に向かって疑問を問いかける。その疑問は誰もが思い浮かんでいたことだった。素手でヴァイラミーを倒した、と証言した少女だ。もしそれが本当ならば普通の人間だとは考えられないだろう。
「知るか。強いて言うのなら、人間の姿をした化け物としか思えん」
誰もが思っていたことを口に出したのは、やはりディーナであった。隣にいる当人であるロールは若干顔を下げて足元を見る。車内には再び気まずい空気が流れてしまった。




