表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/43

chapter3-16

「記憶がない?」

「えぇ、残っているのは四年前からの記憶で。気がついたら教会の神父様に保護されていたんです」


 ミシェルが過去に同じ名前の少女を失ったのは八年前の出来事だった。目の前にいるロールの言葉を信用するならば、ロールが記憶を失う前にミシェルと出会っていたことになるが……。


「おいミシェル」

「なんだ」


 未だに地面に押し付けられているミシェルは、声をかけてきたディーナに対してぶっきらぼうに応える。

 

「お前、前にワタシに自分の過去を語った時、幼馴染の少女は自分の二つ下の年齢だったと言ってたよな」

「……あぁ、言った」

「今お前は十七だったよな。じゃあそいつは十五か、十六のはずか。お前はまだ誕生日を迎えてないんだからな」


 そう。彼女らの年齢を考えると、ミシェルが話す幼馴染の少女の年齢はそれくらいの年齢のはずだ。だが目の前にいるロールと名乗る少女はどう見てもそのような背格好には見えない。年齢は一桁、せいぜい十歳前後だろう。先ほどミシェルが捲し立てていた時に『あまり背が伸びていない』と言っていたことから、ミシェルの記憶の中と比較しても、彼女が少女を失った時と比べて外見にそこまで差異はないはずだ。

 当然、年齢だけを重ねて背格好は変わっていない可能性もあるだろう。だが目の前にいる少女はヴァイラミーを素手で倒した女だ。何か他の可能性があると考えた方が自然だ。

 そう考えたディーナは、ロールの眉間に銃を突きつける。


「ディーナ! 何をする!」

「お前は黙ってろ」


 少女は表情を変えない。自分の体に突きつけられた銃を見つめるだけだ。


「ロール、と言ったか。お前をワタシたちの学校に連れて行く。抵抗するようなら、撃つ」


 その言葉に血相を変えたのはやはりミシェルだった。抵抗の意志を示すものの、体は二人がかりで押さえつけられているために動かすことができない。銃を突きつけられた本人は、少しだけ不思議そうにしてディーナを見つめた。


「……わかりました」

「では行くぞ」

「あ、やっぱり待ってください」


 素直に了承したと思った矢先の行動に、ディーナはずっこけそうになった。真逆のことを言った本人はくるりと後ろを向き、森の中を指差す。


「神父様に、留守にすることを伝えなければいけません」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ