chapter3-12
身の丈ほどある植物をナイフで切り分け、班員たちは前へ前へと進んでいく。獣道すらできていない道だ。普通に考えていけばこんなところに生物などいるわけないのだが、相手は未知の生物である。自分たちが知らない行動をしている可能性だってあるだろう。
そんな考えを持ちながら、ミシェルたちは咆哮が聞こえた方へと進んでいく。車を止めた時に聞こえた咆哮は、今、まったく聞こえない。先刻の鳴き声だけを頼りにミシェルたちは前に進んでいくのだった。
そうして十数分ほど歩き続けると、やがて林を抜け、元々いたところから反対の道へとたどり着いた。だが、そこには何も見あたらない。ヴァイラミーも、金色の何かも。
無駄足だったか、と班員たちはため息を吐き、今来た道を戻ろうとしたその時。唐突にミシェルが振り向き、背後をじっと見つめ始めた。
「どうした?」
遠方を見つめているミシェルに対してディーナが声をかける。彼女は「いや」と一言返答するが、その場を動こうとはしない。
何か見えたのだろうかと班員たちはミシェルと同じ方向に視線を向けるが、結果は先ほど見渡した通りで何かがあるわけではなさそうだ。マオが再び戻ることを促して、ようやくミシェルが動き出す。
「すまない。何か、こう、変な予感がしてね」
「変な予感?」
「言葉にするのが難しいな。何かあるような、虫の知らせのような何かを感じたんだ」
「違和感のような何かですの?」
「そうだな。だが悪い予感ではないような……」
ミシェルの言葉はそこで掻き消された。先ほどの咆哮が、また近くの方から聞こえてきたのだ。




