chapter:1-1
とりあえず初週で失踪はしませんでした。
体力づくりの授業を受けたミシェルとディーナはシャワーを浴び、そして今は午後の座学に向けた昼休憩の時間を取っていた。二人は朝食の時と同様に食堂へと向かい、各々好きな料理を取ってテーブルにて合流した。
朝食に引き続きバイキング形式であるこのランチタイムでは、それぞれの性格がトレイに乗っている料理で表現されている。例えばミシェルのトレイは主食、野菜、肉などがバランス良く乗っているのに対して、ディーナのトレイには二つのハンバーガーとポテトが乗せられていた。
「ディーナ、君はもう少し栄養というものを考えた方が良いんじゃないか」
「バカだなお前。明日死ぬかもしれないのにそんなものを考えて食事を摂るなど愚の骨頂だ。死に際に無駄な後悔を増やすことになるぞ」
「……なるほど、一理あるかもしれない。私たちは今年から現場がメインだものな」
彼女たちが過ごしているヴァイラミー・バスターズを育成するための学校では、体力作りのための三年、現場で直接ヴァイラミーと戦い経験を積む四年の計七年制の学校となっていた。
今年で所属して四年目になるミシェルやディーナは直接ヴァイラミーと交戦する機会が増えるため、命を落とす可能性も増えるのだ。
「ま、座学と運動ばかりの退屈な毎日から解放されると思えば、死ぬ可能性がある実戦メインの方がマシか」
「君は戦うのが怖いだとか言い出しそうな人間ではないものな」
「バカか。そんなことを言い出す人間がバスターズスクールに来るわけないだろ」
「ははッ、違いない」
バスターズを育成するためのこの学校にやって来る人間はヴァイラミーと戦うための何かしらの理由のある人間たちだ。四年目まで進級することができた生徒に実戦を怖がる人間などいないだろう。寧ろ戦うことを嬉しがる人の方が多そうだ、とミシェルは思っていた。
「そういえば四年からの実戦を意識した特訓はフォーマンセル固定になるんだっけか」
いつの間にかトレイに存在していた二つのハンバーガーを平らげたディーナが、残りのしなびたポテトをつまみながらポツリと呟いた。
これまでの対ヴァイラミーを想定された特訓では個人、又はツーマンセルでの行動が基本であった。それはヴァイラミーを倒すということより、いざ敵と対峙した際に生き残るための訓練が必要だったためだ。三年の基礎訓練を終えてある程度の体力がついた彼女たちは、ヴァイラミーを倒すための身体能力と判断力があると判断されてより実戦に近い隊列での特訓を行うこととなっている。
「残りのメンバーだが、どうする?」
「さぁ、とりあえずマオを誘うつもりだが。あと一人はその特訓の時にでも決めることになるだろう。それよりも」
昼食を食べ終えたミシェルが立ち上がり、食堂の中央にある時計へと目を向けた。話ながら昼食を取っていたこともあり、もう少しで午後の授業が始まりそうな時間となっていた。二人は空となったトレイを返却口へと片づけると、小走りで講習室へと向かった。
一ヶ月くらいは世界観の話が多めになるかもしれないので、あとでまとめてみた方が良いかもです。