chapter3-10
「え、一班だけで行動したいってのかい」
ミシェルからはぐれヴァイラミーを探す提案を聞いたイクサは、少しだけポーカーフェイスを崩した後、またいつもの笑みを浮かべて宥めるような声を出す。
「でも、君たちがヴァイラミーを見つけたとしても倒しきれないだろ」
「ですが場所を伝えるだけでも役に立てるかと」
「それじゃ死ににいくようなものじゃないか」
「そうですね。でも逃して街や村の一般の人たちに危害を与えた方がまずいと思うので」
「……それはそうだけどね」
イクサは神妙な表情で数秒ほど沈黙する。やがて視線をミシェルの方へと向けると、彼女の手に車の鍵を渡した。
行ってこい、というサインだ。
「搭載されている無線機の使い方はわかるよね」
「えぇ。習ってますから」
「じゃあなるべくく生きて帰ってくるように。死んだら俺たち悲しむからね」
そう言うと彼はミシェルの肩を叩き、別の車の方へと向かって無線機に何か話し始めた。彼女らの行動を他の部隊にも報告しているのだろう。何を言われているのかはわからないが、とりあえず怒鳴られているのはわかる。生徒たちだけの班が一班だけで行動するのだ。正気を疑われてもしかたがないだろう。
これ以上この場にいてもこの怒鳴り声が聞こえてくるだけだ。ミシェルは班員を車の中に押し込むと、運転席に座り車を発進させるのであった。




