chapter3-9
「ありがとうマオ。おかげで決心がついた」
ミシェルはそう言うと立ち上がり、近くでぼうっと銃を抱えて座っていた残り二人の班員のところまで近づいた。
「なぁディーナ、ナコ。私たちだけで、はぐれヴァイラミーを探しに行こうと言ったら怒るか?」
「ゔぇ」
「おぉ」
ミシェルの言葉にディーナは感嘆の声をあげ、ナコは否定を意味するような鳴き声を出す。ある程度予想通りだったためか、二人の反応を見たミシェルはくつくつと笑い始めた。
「え、え、なんでですか。さっき生徒たちだけで行っても無意味だろうって言ってたじゃないですか」
「気が変わってしまってね。やっぱりヴァイラミーを逃したままにした方がまずいんじゃないかと思ったわけだ」
「こ、答えになってませんよ。逃したままなのは確かに危険ですけど、わたしたちが行ったところでやられるだけじゃないですか」
「あぁ。だが時間は稼げるかもしれない」
「それって……」
犬死に、という言葉がナコの脳内に浮かぶ。
自分達が探して、他の部隊より先に見つけた場合に、応援を要請すれば一般の人たちへ危害が及ぶ前に討伐ができるかもしれないだろう。だが、代わりに自分達は死ぬかもしれない。ミシェルが言っているのはそう言うことだった。
「ナコの反応はもっともなものだろう。一緒に来いとは言うまいよ」
「えと、じゃあ」
「面白い。どれだけ持ち堪えられるか試してみようじゃないか」
「えぇ……」
輸送中のグロッキーな様子はどこへやら。顔色が人間のものになったディーナが、目を輝かせながら立ち上がる。あぁそうだ、この人もどっかおかしい人だったんだ、とナコは心の中でつぶやいた。
ならば、とナコはもう一人の班員へと視線を向けた。マオさん、貴方なら二人を止められますよね……。
そんな意図を込めた視線を浴びて、マオは若干気まずそうに顔を背けた。なにしろミシェルを焚き付けたのは彼女なのだ。
「さて、マオ。君はどうしたい?」
この班に味方はいない。教師のイクサはここで待機するように言っているのだし、彼女たちの言うことに従う必要などない。
「わ」
なのだけれど。
「わかりました……。いきます……」
ここで自分一人が残って三人が死んでしまったら、今度は自分が死ぬまで気分が悪くなりそうだ。そう思った彼女はイヤイヤ思いながらも肯定するしか出来なかったのである。




