chapter3-6
ヴァイラミーを取り逃すということは最大の失態である。逃したヴァイラミーが街や村に降り、民間人に危害が及ぶためだ。つまりもう一匹来るはずのヴァイラミーを本当に逃していたとしたら、多大な犠牲が発生することになる。
もちろん学生である彼女らが最終防衛線ではなく、更に後方に幾つかの部隊が控えている。しかし防衛線が突破される度に民間人が危なくなることには違いない。
「連絡は二匹セットで来るって聞いていた。途中で別方向に行ったんだろう」
イクサは無線機を取ると他の部隊に連絡を入れた。被害なくヴァイラミーを倒せた影響か、生徒たちの間では士気が高まっていた。
「探しに行きましょう!」
「そうだよ! 俺たちならやれるって!」
そう叫ぶ男子生徒の元に戦士たちが集う。指揮官はどうか。無線機を置いたイクサは顎を撫でながら熟考し始める。
「おい、お前はどう思う」
盛り上がる生徒たちとは別に、ミシェル班は一度集合して話し合っていた。
「……追わない方が良い、とは思っているが」
「ミシェルさんが歯切れの悪い答えを出すのは珍しいですね?」
「本音と建前が異なるってことさ」
先程はスムーズに戦うことができたとはいえ、学生である自分達が次も無事に勝てるとは限らない。それに先程は待機して迎え撃つ側に立っていたが、探して戦うとなるとまた状況が異なる。そう考えると自分達が出向くよりは、正式なバスターズに討伐を依頼した方が良いはずだ。そうミシェルは考えていた。
しかし内心では、万が一でも民間人に危害が加わる結果にはなりたくない。過去の自分と同じような経験は誰にもしてほしくないと、そういう感情も持ち合わせていた。
効率を重視した思考か、効率を無視した感情か。どちらを優先するべきかはわかっていた。だからこそ、ミシェルはこう答える。
「いや、やはり待機の方がいいはずだ。いつ下がるかわからない士気を参考にするのは良くない気がする」
「……ふぅん?」
何か引っかかるような声を出したマオだったが、それ以上は何も言わず、指揮を取るイクサの言葉を待つのだった。




