chapter3-5
Twitterには書きましたが、第一部完結を一旦目指すことにしました。
人間より少しだけ小さいくらいのサイズのイノシシが木々の中から飛び出してきた。本来の茶色い毛皮の一部が、線になるように白く染まっている。体の一部の色が変わると言うことは、授業で聞いていたヴァイラミーの特徴と一致していた。
イノシシヴァイラミーは咆哮をあげて生徒たちの群れに突っ込んでいく。初めての実戦が始まった。
「ディーナ!」
「分かってるっ」
ミシェルとディーナは握っていた銃をヴァイラミーへと向ける。既にヴァイラミーは凄まじい勢いで生徒たちを目がけて突進しており、一人の男子生徒を吹き飛ばしていた。
「そこだっ」
イノシシが次のターゲットを捉えるために方向転換をした隙を狙いディーナが銃を発砲した。対ヴァイラミー用に改造されたその実弾はヴァイラミーの体に着弾すると同時に爆発する。
苦しそうな悲鳴をあげたイノシシはその威力に怯み、先ほど男子を吹き飛ばした勢いはどこへやら、足をついてその場に立ち止まる。
「今だっ」
ミシェルが先ほどの弾丸とは違う弾を放つ。撃ち込まれた弾丸は爆発などはしない。放ったのは麻酔弾だった。
ヴァイラミーは興奮した様子で一度大きく足を上げたものの、反撃することもなくその場に寝転んだ。サイズにもよるが、一部のヴァイラミーは絶命するまで戦うよりも、こうして一度眠らせた方がスムーズに討伐できるのだ。
横になったヴァイラミーにイクサが注射器を刺し、血液をタンクに抽出していく。こうして獲得した血液は、対ヴァイラミー用の研究機関へと使われることになっている。授業では習ったが、実際に見るのは初めてであった。
「……ところで、もう一匹来るはずのヴァイラミーは?」
ミシェルのその言葉をきっかけに、幾つかの人々が辺りをキョロキョロと見渡す。……なんだか嫌な予感がすると感じていたのは一人だけではなかった。




