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chapter3-3

 遠くの方から大きな音が聞こえた。自然に発生する音ではない火薬の音。今彼女たちが握っているものから発せられる銃の音だった。前線にいる部隊が戦いを始めたのだ。

 遠くからとは言え聞こえてくる戦いの音を聞いて、ナコは体が強張っていくのを感じた。大丈夫だ、安心しろ、先生だって大丈夫だって言ってたじゃないか――。そう自分に言い聞かせているが、体は思考と反対の動きを見せる。


「怖いんですの?」


 その時、震えていたナコの手を温かい何かが包んだ。視線を向けると、チームメイトのマオが彼女の手を握っていた。


「は、はい。すみません」

「謝らなくて良いですわ。理屈と感情は違いますもの」


 マオは手を強く握りながらにっこりとした笑みを浮かべる。緊迫した現場とは考えられないようなその柔らかな笑みに、少しだけナコの体も柔らかくなった気がした。

 

「で、でも、みんなはもうさっきの言葉で」

「勇気が湧いてきた人もいるでしょうね。でも例外がいてもおかしくない」

「それはわたしが臆病だから……」

「慎重、とも言えるのではなくて?」

「それって戦いにおいてはマイナスじゃないですか?」

「そうかしら。スタンドプレーで行動しようとするあの人たちより、十分チームのために動けていると思うけれど」


 あの人たち、というマオの先にはミシェルとディーナがいた。彼女たちは学年の中でも特に成績の良い生徒だ。

 彼女たちならば、わたしなどいなくとも大きな戦果をあげるだろう――。ナコは羨望と自己嫌悪の気持ちを込めて二人を見た。例の二人はナコからの視線など全く気にせずにどつき合いを始めている。


「見なさいあの二人を。あんなことでチームに貢献できると思っていて?」

「……二人で戦い続けることができれば。それだけの実力は、あの二人にはあるかと」

「そうかもしれませんわね。ですが、協調性のない実力差二人より、皆と合わせられる協調性のあふれる一人がいた方が上手く回ると思いますけれど」


 ……そんなものなのかなぁ。

 チームメイトの言葉に励まされていると気づかないナコであったが、その体の強張りは溶けていた。そのことに気がついたのは一段近づいた火薬の音を聞いてからであった。

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