chapter3-2
全てにおいての情熱が消えつつある気がします。
「時間が来るまでは待機だからねー」
ここまで彼女らを連れてきたイクサはいつもと同じような口調で周りの生徒たちへ指示を出す。緊張感が全く感じられないその話し方に、張り詰めていた空気が緩くなっていくのを感じる。
彼は怖くないのだろうか? そのような疑問が生徒たちに浮かび上がる。武器を持ってこの場にいる以上、彼もこの後来るであろう無数の脅威と戦うことになるのは必然なのだ。それでもいつものペースを崩さない彼の様子を見て、生徒の一人が皆を代表して質問をした。
「先生は怖くないんですか? 死ぬかもしれないのに」
「希望は持っているかな」
生徒からの質問に対して、イクサは抽象的な答えを出した。どういう意味かを問う発言をすると、彼は平然とした様子でこう答える。
「経験が足りないのは確かだけど、俺が見ている中でみんなは十分に戦力になると思ってるからね。俺も含めて全員が頑張れば、この部隊だけでも無事でいられるんじゃないかって思ってるんだ」
ま、みんな頑張ってよ。と付け加えたイクサは視線を前方へと移し、周りへの警戒を強めた。普段から感情が一定であり考えが読みづらい彼の言葉ではあったが、生徒たちの中に生まれていた空気を変えるには十分であった。




