chapter2-11
「ヴァイラミーの討伐依頼だと?」
討伐依頼「訓練」と付けないということは、ヴァイラミーとの実戦を示していた。ただ本当のヴァイラミーとの実戦は、この学校に所属しているこれまでの四年間で何度か経験をしていた。
しかし、今回のように非常用のサイレンが鳴ることはなく、それどころか事前に「◯月◯日に本部のバスターズが討伐に向かうらしい、同行するか?」と質問され、討伐に関しては任意の状態がデフォルトであった。
だが今日はその限りではない。急遽呼び集められた上に、四年から七年のほとんどの生徒が招集されている。つまりはこれから伝えられる事項は、過酷なものを想定しなくてはいけない。わかってはいたはずだが、ミシェルは心の中でため息を吐いた。
「先ほど十三時五十分頃、北西のシーホーク森林にてヴァイラミーの大群が観測された。具体的な数は数え切れていないが、小型のものから大型のものまで数十匹はいるということだ。お前たちには現場に向かい、そのヴァイラミーたちと戦闘してもらう」
数十匹、だと!?
授業で習った通り、犬ほどの大きさの小型のヴァイラミーだとしても、小さな村くらいならば簡単に滅ぼせるほどの力を持っている。現にミシェルにとって忌々しい過去である熊のヴァイラミーは、バスターズが来るまでに屋敷の中にいたほとんどの人間を殺していた。
そんな生物が大小問わず観測されたというのだ。周りにいる生徒たちの顔から血の気が引いていくのが見てわかる。
絶望しているのだ。
人類の脅威である怪物が、一匹二匹ではなく数十匹も現れたと言うその報告に。そしてこれから伝えられるであろう彼女たちへの依頼に。
「君たちには……」
一呼吸置いて、シムカ・オルシエは連絡を続けた。
「そのヴァイラミーと戦ってもらう。無論、命を懸けてだ」




