表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

家紋ホラー集

牛の首

作者: 家紋 武範

 貴方(あんだ)(たづ)、よぐこったら(なぬ)もねぇ田舎さ来だごどなや。


 ラジオ(ラズヲ)(きょぐ)の取材だど? はー、まずご苦労なごどだナイす。


 ンでもなぁ、(うす)の首の話すだべ? そういうのにあんまし興味もだねぇほうがいいヨ?


 貴方(あんだ)(たづ)も一生懸命探して来たんだドは思うけどサ。


 ンだ。この村でお祭りスてんのは牛首(ウスベゴ)様だぁ。


 ナぬ? 牛頭天王(ごずでんのお)? ンだ。なにやらそういう名前だったがも知んねぇげど、この村では(むがす)がら牛首(ウスベゴ)さまっつってだんだなぁ。


 ン? ウスどベゴは同ず意味だってが? ふふふ。


 他所(よそ)の地方では、(ウス)をベゴっつぅみでーだげど、おそらく牛首(ウスベゴ)さまがら来てんでねーのがや?


 (ウス)が『ベーベー』鳴ぐがら『ベゴ』だってが? 馬鹿こけ。『ベーベー』鳴ぐのは羊が山羊だっぺ。


 ベゴは『(こうべ)』がらだ。元は『うしこうべ』さま。ほいづが年が経づにつれ、『ウスベゴ』さまって呼ばれるようになっのヨ。

 ンだ。『こうべ』が逆になったんだべなァ。


 牛首(ウスベゴ)さまは元々(もどもど)悪鬼でヨ。人を呑んだり、病気(びょうぎ)にさせたりする悪い神様だったんだな。


 ()いづを『どうか一年(いづねん)大人(おどな)しくしてでください』っつぅごどで、お寺でお祭りスてヨ。

 神輿や山車や踊りをしてご機嫌を良ぐするようにすてだんだナ。


 その踊りで使うやづに、牛首(ウスベゴ)さまのお面があったんだナ。


 木造(きづぐ)りの面でヨ。んだげど祭りで使われるのを見だごどねぇ。どうやら和尚さんの話スだど、(むがす)お面をかぶって事故があった。それ以来飾るだげで使ってはいねぇ。とこういうわげだ。


 どんな事故だが聞ぐど、どうやら牛首(ウスベゴ)さまのお面をかぶっと、牛首(ウスベゴ)さまになって、人に災いをもたらす。とこう来たもんだ。


 それを聞いでだのは、この村の悪餓鬼(わるがき)ヨ。餓鬼奴等(がぎめら)、『そだごどあるわげねぇ』『たしかめでみっぺ』っつって、夕方(ゆうがだ)の日の落ちる前に(あづま)って寺の本堂の裏手にあるお堂サ向がったんだ。


 四人の悪餓鬼(わるがき)は、大将を平太(へいた)っつってな。その他に弥助(やすけ)四郎(しろう)茂八(もはぢ)だった。


 蛇を手負(はんごろし)にすると、恨んで復讐スにくると聞いでは、蛇を半殺しにしてヨ。赤沼(あがぬま)サ石ば投げっと祟りがあるってのに石投げして復讐も祟りもないど(うそぶ)く連中だ。


 そいづら、こぞって悪戯(いだずら)笑い浮がべでヨォ。本堂の裏の林に着いだ頃には日も暮れで暗ぐなってたんだワ。


 それでもお堂サ(ちが)づいでみっと、格子の向こうサ、牛首(ウスベゴ)さまのお面が見える。


 荒ぐ削られだ造りの面だげんとも、目ど(くぢ)は丁寧に(こさ)えられで、まるで生ぎでるようだったワな。


 ンだげんとも、格子には南京錠が下ろされでてヨ。(ふう)されでだんだな。

 でも、弥助ってのが器用でナ。針金一本でこれを簡単に開げだんだ。


 四人とも楽すげに中サ(へえ)って、早速牛首(ウスベゴ)さまの面を手に取ったんだ。


 そごで、では誰がこれをかぶるべがどなった。

 平太は茂八を名指しスた。


 茂八は悪餓鬼奴等(わるがきめら)の中でも弱虫(よわむす)だったがら度胸だめスもあったんだな。


 平太は嫌がる茂八に無理矢理お面をかぶせだんだ。


 板間にねじ伏せられで、バダバダ暴れでだ茂八だっだげど、次第に大人(おどな)しくなって、立ぢ上がって三人を見だんだナ。


 平太は指さして笑ってだんだげど、茂八はその平太の腕ば取って、ガバッと面の口の中サ入れでしまった。


 面もカパっと口が開いでナ。平太の腕がどごサ(へえ)ったんべど思うぐらい肩まで口の中サ(へえ)っちまってヨォ。


 他の二人はガダガダど震えるしか出来ねがったんだ。


 するとバツンと面の口が閉じられでヨ。平太の肩がら血がドバドバ、ドバドバって吹ぎ出してヨォ。辺りは血だら真っ赤だ。


 平太は肩を抱えでワンワン泣ぎながら、(いで)(いで)え言ってだげんとも、茂八はそんな平太の腰ば掴んで、また面の口をカパっと開げで今度(こんだぁ)丸呑みだ。


 (のご)った弥助ど四郎は、その様バ(すばら)ぐみでだんだど。



 果だすてこれは現実なのが?



 夢ではねェのが?





 その間、茂八のかぶった面の口は、平太の肉を喰らって、クチャラクチャラ鳴らすてだんだげど、その(うぢ)に『モオー』っと一声鳴いだがど思うど、『ゲプー』って大きなゲップだべ。


 辺りには血と肉の臭いが充満スてヨォ。ヘドば吐ぎそうになったんだべ。


 二人はこれは噂に聞く手品(でずな)というもんで、平太と茂八どで、オラたぢを騙すてんでねーべがど思ったげど(つが)った。


 面をかぶった茂八がゲップする度に、喉首(のどっくび)がブワッと広がンのナ。

 これは人でねェ。(うす)反芻(はんすう)だべど思った。


 茂八は牛首(ウスベゴ)さまになっつまったんだどわがったんだな。


 牛首(ウスベゴ)さまは貪欲(どんよぐ)満足(まんぞぐ)を知らねェ。


 茂八はゲップすて、その度にまだ口をクチャラクチャラ。


 二人は自分(ずぶん)たぢも呑まれるど思って、お堂の外サ飛び出したんだァ。


 和尚さんならなんとかすてくれる。

 そう思って本堂のほうに行ぐど、本堂の(あが)りが()いでない。


 その頃、和尚さんは小僧を引き連れて村の葬式さ行ってたんだナ。


 ンだげんとも、二人とも本堂サ上がり込んで、(なぬ)がすがるもんを探すたんだな。


 しかし(すかす)(なぬ)もない。ただ寺ン中の(おぐ)(おぐ)へ逃げるだげだ。


 しかも(すかも)後ろからバダバダど二人を追いかげで畳を踏む(おど)が聞こえる。


 こら捕まったら喰われると、二人はさらに奥サ逃げまぐって、遂には行ぎ止まりの小さな部屋にたどり着いだ。


 二人はそン中サ(へえ)りこんで、戸サ部屋のモンを押し付けで開がねようにすたんだ。


 そうスてっど茂八が追い付いたらしぐ、戸をガダガダやってだんだナ。

 そごで怖ぐなった弥助が戸の向ごうサ聞いだんだナ。


『お(めェ)は茂八が!? 牛首(ウスベゴ)さまが!?』


 てな。するど戸も何も部屋ン中に()っ飛んでヨォ。真っ暗な中にちょ()ん──と茂八らしい人影が立ってだんだワ。そすて言った。















『どっちだど思う?』




 どナ。二人は夢中になって逃げようど、茂八の脇腹の隙間を狙って転がるように飛び出したンだ。


 弥助が廊下サ飛び出して振り返って見るド、茂八サ腰捕まえられでもがいでる四郎がいだんだド。


 四郎──! と叫ぼうどしたら、まだもや面の口のとごがパカッと開いで、四郎をアングアングど呑みこんですまった。


 はァーー、これは自分(ずぶん)も呑まれるど思って、弥助は四つん這いになって寺ン中を逃げ回った。

 それを茂八はバダバダ(おど)を立でで追いかけ回す。


 そのうぢに弥助の着物の帯を捕まれでヨォ。いやはやもうダメだど思って右手を上げで抵抗すようどすた。


 ンだげんと、その手が捕まれてガブーっと肩まで呑みこまっちヨォ。

 見ればもう肩がら先がなぐなってる。


 わがったとたんに痛みが襲ってきて、辺りを転げ回ったンだナァ。


 それでも死にたぐねぇもんだから、這いずり回って逃げようとしたら、今度(こんだぁ)左足を捕まれででヨォ。



 ああもうダメだ!



 ど思ったどごろで、『ダツーン!!』と大きな音がしてよォ。


 弥助が体を起ごして見っと、そごさは弥助の親父が鉄砲構えでだんだど。


 弥助の親父は鉄砲()ぢでヨ。山サ(へっ)ては熊やら(しし)やら()生業(なりわい)でな。丁度、山がら(けっ)てくるどごだったんだ。


 そごで()餓鬼(がぎ)が泣ぎながら追っかげられっとご見つけで、なんの遊びがど思って追っかけで来たんだド。


 そしたら我が子の腕喰われるの見で、これはただごどではねェど、襲ってる童子(わらす)の腕を狙って撃ったンだナ。


 茂八の腕は吹っ飛んででよぉ。その際に牛首(ウスベゴ)さまのお面も外れで畳の上サ落っこったんだど。


 弥助は、はァーー助かった。ど思ったンだげどサ。茂八はクルっとひっくり返ったがど思うど、牛首(ウスベゴ)さまのお面を残った片手にとって、山さ駆けでったンだどサ。


 それ以来、村の家畜が荒らされだり、山サ(へえ)たやづが神隠しにあったりどしたんで、山狩りをして茂八を探しだんだと。


 ンだけど、山の洞穴(ほらあな)ン中に牛首(ウスベゴ)さまの面を見つけだだげで、茂八の姿はどごにもねがったんだど。


 こんなに恐ろしい牛首(ウスベゴ)さまの面は燃やしてしまうべ、ど成ったんだげど、さすがに祭りで使うもんだっつーごどで、日を選んで燃やすごどにしたんだげど、燃やす前日に和尚さんが、お面をしまってだどごろを確かめっと、もうすでに持ち去られだあどだったんだど。

 その部屋には泥にまみれだ子供の足。これは茂八に違いないとなったが、その後に和尚さんが牛首(ウスベゴ)さまをなだめるお祭りを開いでナ。

 それ以来パッタど害がなぐなったんだど。




 茂八はその後が?


 それよ。それがら噂ではヨ。人に化げで普通の生活をすながら人呑みを続げる悪い鬼になってるってはなすだ。






 ほ れ


 お前さんの後ろに。










 なーんてな。冗談だ。怖がっちべ。


 だがら、貴方(あンだ)(だぢ)も面白半分で牛首(ウスベゴ)さまを調(すら)べでヨォ、ラジオ(ラズヲ)なんかで放送すてはなんねェど?


 悪戯者(いだずらもん)牛首(ウスベゴ)さまの面を見つけで、()れかぶりだぐなりましたとなったら、もう誰も止めれられねぇ。


 な。わがったら、この話すは人様に話さねェようにな。



 ん? はっはっは、貴方(あんだ)、オラが義手(ぎす)だどよぐわがったな。



 ンだ。オラそんどぎの生ぎ残りでヨ。だがら臨場感あったべ?




 うん。オラが弥助が、茂八のどっちがってが?













『どっちだど思う?』





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] うひゃあ(゜Д゜;) 最後の最後の質問の返事がまた怖い(゜Д゜;) 果たしてどっちなのか……なところでエンド!! これぞホラー……面白怖かったのです(゜Д゜;)
[良い点] ∀・)さすが主催者。お見事なご手腕です。伝承ホラーを極めているというか、最初作品をパッとみたときに「読みづらいのかな?」と思ったんですけど、これが不思議と「読みやすく」あったんですね。そし…
[良い点] ジワリと来るいいオチでした
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ