第2話 初めての仲間
きんぴらが好きです。
「魔王討伐…か…」
王の依頼を受けてもう2日、未だに俺は現実を受け止められずにいた。正直、金に目が眩んだ人間にはろくな結末がないことを実感した。それと…
「冒険者さん!!ホントに魔王を討伐する気あるんですか!?ろくに準備もしないで挑むと簡単にやられてしまいますよ!!いいですか?まずは準備をして、今のうちに心残りがあるなら、全て片付けておいてください!!だいたい冒険者さんは何もかもが甘いんですよ!!せっかく私のような清く正しく美し、」
「分かった!!分かった!!もう分かったから…」
なぜこうなったのだろう…
プロレリア城にて〜〜
「ありがとう!!勇気ある冒険者よ!!」
「まぁ、余り期待しないで下さいね…」
「何を言うか!!魔王討伐を引き受けてくれるものなど、滅多におらん。それほど魔王とは恐ろしいものだ。」
なぜ依頼を受けてしまったんだ!俺のバカ!
「差し当って、お主のパーティーメンバーとなる者を王国から数名送ろう。王国でも名のある者達を揃えよう。お主の要望もある程度は答えよう」
「では、魔法使いを1人お願いできますか。」
「1人だけか?戦士や僧侶は必要ないか?」
「必要ないという訳では無いのですが、なるべく数が少ない方が個人的に気が楽で…」
余り大人数が好きじゃないとかいえないもん…
「なるほど、分かった!魔法使いを1人手配しよう。この国でも名のあるものをな!」
ほぅ、それは期待できるな。
「ありがとうございます。」
〜数時間後〜
城の客室で待たされ、数時間がたった。
1人選ぶのにこんなに時間がかかるものなのか?
すると、1人の兵士が客室に凄い勢いで入ってくると、
「申し訳ございません!冒険者さま!」
と急に謝罪された。何かあったか?
「どうしたんですか?そんなに慌てて、」
「実は今王国には長期間遠征できる魔法使いが余りいないのです。それをすっかり忘れてて…」
マジかよ…いきなりトラブルとか先が思いやられるぞ。
「1人もいないんですか?」
「今冠位称号を持つ魔法使い達は、違う大陸へ遠征に行きまして、今この街にいる魔法使いはほとんどが、初級や中級の魔法使いでして…」
おいおい王様、そんな大事な事忘れてたのかよ…
というか冠位称号って何?強いのかよくわからん。
「じゃ、じゃあ中級でもいいんで…」
「でも中級魔法使いはろくに戦闘もサポートも出来ない者ばかりで、」
「マジすか…」
「ですが、たった1人だけ上級魔法使いがいるのですが…」
おっ!!やっぱこういう感じにいい展開になってくれるか!!これは期待…と怪しいフラグが…
「少々その魔法使いは問題がありまして…」
はい、知ってましたーそ、ーんな感じですよねー
「じゃあもう、その人で大丈夫です。」
「いっ、今すぐここに連れてまいります!」
……心配だ
「お待たせしました、この者が先程話していた
上級魔法使いの方です。」
兵士が連れてきた魔法使いを見て俺は驚愕した、
言葉が出てこなくなるほど美しい女の子だった。
透き通るような白髪に綺麗なブルーの瞳、
顔立ちも整っていて文句の付けようがない。
体つきも良く、まるで芸術作品のようだった。
これのどこに文句があるというのだ?
この兵士は何を言っているんだ。
「こ、こんにちは。私が冒険者です。」
「……」
「……あの〜」
「はぁ…」
はぁ…!?今はぁ、って言ったこの子?
酷くない?初対面でそれはさすがに酷くない?
沈黙が流れたあと魔法使いの子がおもむろに自己紹介を始めた。
「私の名はセンテム=フォレア=セリウスヴァン。名家セリウスヴァン家の長女にして
いやこの世界最強の魔法使いになる者。」
「よ、よろしくお願いします…」
なんかすごい子だな〜名家の長女とか、でも特に問題はない気がするんだけどな。
「冒険者さま、この者は確かに腕が一流なのですが…」
「…ですが?」
「いや、口で説明するよりも目で見てもらった方が早いですね。フォレアさま攻撃魔法を撃って下さい。なんでもいいので。」
「…ぐっ……わ、わかりました…」
ぐっ…て何?ねぇ
「……雷鳴よ、鳴れ。
そなたは、全てを揺らす者。
電撃よ、あれ。
そなたは、全てを壊すもの。」
ん?なんかとっても怖い呪文な気がするぞ…
「全ての大地に鉄槌を下す。
我は平等に汝らに下す。
等しく虚しく全てを無に。」
これはまずいのでは…兵士さんなんで焦ってないの?明らかやばい呪文でしょ!!これ!
ヴァク・ランゼクターセス
『雷よ、全てを無に平等に』
ビリビリ…バリッ…
「くっ………へ?」
流石にヤバイと思い、とっさにガードをしたのだが
思ってた様な音と威力ではなく、
危険を感じ無意識に閉じていたを開けてみると
そこには顔を真っ赤にして、今にも泣きそうになっていたフォレアと結果が分かってた様な顔をした兵士がいた。
「あの〜、これはいったい?」
「フォレアさまは攻撃魔法のセンスが一切ないのです。」
「そ、そうなんですか〜…」
おいおい、必死にガードしてた俺がバカみたいじゃないですか…
というかそれなら、なぜ上級魔法使いなんかになれたのだろうか。
「では上級魔法使いになれたのは?」
「フォレアさまは攻撃魔法のセンスは一切ありませんが、その代わり回復などのサポート系の魔法は天才的なセンスをお持ちで、この国でも抜きんでた実力を持っています。」
へ〜、やっぱすごい子だったんだ
「では別に問題と言うほどでもないのでは?」
「今の時代攻撃魔法が使えない魔法使いは
余り需要がなく、広範囲に及ぶ攻撃魔法などが
今の魔法使いにとっては、1番必要なことなのです。回復魔法は今は二の次と言った感じで…」
「それでも、回復魔法がトップクラスなのは
凄いことなんじゃないんですか?」
「回復魔法の点に関しては、問題は無いんですが、やはり攻撃魔法のセンスがないというのが
かなり大きな痛手で…でもホントに回復魔法は
ほかの魔法使いに比べても桁ちが…」
「もういいよ!もう大丈夫よ!」
兵士が話してる中に間を割って聞こえてきたのは
フォレアの声だった
「もういいのよ、今の時代に攻撃魔法魔法が使えない私が悪いのよ…どうせ私は使い物にならないわ。冠位称号の魔法使いが帰ってくるまで待って
その人達の中から優秀な人を連れていくのが1番よ…」
その時、フォレアの顔はとても悔しそうにみえた
自分で話してて辛そうにしていた
きっとそれほどまでに悔しかったのだろう
自分一人だけ攻撃魔法のセンスが無かったことに
だが…
「回復魔法はこの国でもトップレベルなんだろ?」
「えっ…なにを…」
「それだけ努力したんだろ?
攻撃魔法が使えなくとも、『せめて回復魔法だけは誰にも負けない』って、そんな気持ちで」
「…貴方に私の何がわかるの?
魔王討伐を依頼される程の実力を持っている
才能に恵まれた貴方に…私の何が分かるの!!」
悲痛な叫びが部屋に響く
今まで言いたくても言えなかった
腹の底に溜まった言葉を放った
それでも…
「確かに俺はお前のことは知らん」
「だが、攻撃魔法が使えないなんてお前の事情も
俺は知らんし、そんなくだらないことは気にしない」
「くだっ…」
「大事なのはそこじゃない、
お前に『戦う意思があるか』それだけだ」
「多分お前、今まで冒険に連れて行ってもらったことないだろ。」
「ば、バカにしないでよ!!私だって1度や2度の
ダンジョン攻略に参加したことくらいはあるだろ」
「じゃあお前はそこでどんなことをした?」
「そ、そんなのもちろんサポートに、」
「それで?」
「それでって…」
フォレアの言葉が止まった
やっぱりそうだったか、
きっとフォレアは他の魔法使いに煙たがられている。
攻撃魔法の使えないフォレアがダンジョンに行ったら、もちろんやることはサポート一択、
だが、さっき兵士も言っていた通り、
きっと攻撃魔法が使えないフォレアは敵を倒す術がなくお荷物扱いでもされたんだろう。
いくら回復魔法がトップクラスとはいえ、
自分を守る術がないフォレアは
いくらサポートをしても結局は邪魔にしかならない。
回復なら回復量が少なくても
薬草やらほかの回復手段もある。
「……」
沈黙が続く
きっと自分でも自信がお荷物になってることなんて、察していただろう。
だが、
「それなら好都合だ」
「なんのこと?」
「俺のパーティーは1人。お前が入るなら2人だ。
お前はたった1人の味方のことだけを考えればいい。」
「何が言いたいの?」
「お前は多分、ダンジョンに行ったとき、
サポートはお前一人だったろ?」
「そうだけど…」
「味方一人一人の体力を把握しておくなんて
集中力がいるしかもかなり面倒臭いだろ?」
「だがパーティーメンバーが1人なら
そんな無駄なこと考えなくてもいいからな。」
「でも私には、自己防衛の手段がほとんど…」
「俺が全部のモンスターぶっ倒してやる。
だからお前は全力で俺の、俺だけのサポートをすればいい。簡単な話だろ?」
そうだ簡単な話だ。余計なことを考えなければ
この子は、フォレアはきっと今までより実力を発揮出来るはずだ。
まぁ、確証なんかコレっぽっちもないがな!
「…本気で言ってるの?
こんな私をパーティーに入れたがるのなんて
あなたくらいの物好きよ」
「俺はお前を信じてるつもりなんだがね〜」
「ホントにいいの?私を連れてってくれるの?」
「お嬢様はしつこいな、」
その時、フォレアの目から大粒の涙が流れた
「うっ、うっうっ」
「お、おい何も泣くこと…」
「…れた」
「な、なんと?」
「うっ、初めてなの、必要とされたの
誰かに、ついて来ても、ぐすっ、いいって言われたの。」
「てことは…」
「ぐすっ、ええついて行くわ
王国最強のサポート魔法使いの実力
遠慮なく発揮させてもらうわ。」
「本当か!ありがとう!
これからよろしく頼むよ!!」
「えぇ、上手に使ってね。」
こうして今に、至るのだが
「冒険者さんはやっぱり自分がどんな依頼を受けたのか分かっていますか?やっぱり意識が足りないと思うんですよ、だから……」
とこんな感じだが
これからきっと役に立ってくれる
俺はそう思っている。
「ちょっと〜、聞いてます?」
「あぁ、スマンスマン」
「はぁ、やっぱり冒険者さんは抜けてますね。
しょうがないですね、とりあえず必要なものを
街に買いに行きましょ!」
「あぁ、そうするか」
これから2人でこの大陸を救うのか…
彼女は最後まできっとついて来てくれるだろうな
「 」
「ん?何か言ったか?」
「いえ、なんでもないですっ!」
これから2人の新しい冒険が始まる
どんな険しい道が待っていようと
きっと取り超えるだろう
読者の皆様
ここまで読んでいただきありがとうございます。
もしこの話を読んで
「面白かった」、「続きが気になる」
と思っていただけなら幸いです。
もし良かったら広告下の
『☆☆☆☆☆』と『ブックマーク』への登録で
作品への応援よろしくお願いします。
もし気になった点があったら、小さいことでも良いのでコメントで言って貰えると助かります。