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 朝食後、ルリィがわたしに手紙を持ってきた。セルニオッド様から、この間の返事が来たのである。流石に返信はメッセンジャーに頼んだようだ。逆にアメジク様たちがまたやってきたら、いたたまれない。

 自室でその手紙の封を切った。

 手紙の内容は、実にシンプルで、空いている日付だけを教えてくれるものだった。


「――……?」


 ただ、少しばかり違和感がある。いつもなら、雑談めいた近況報告みたいなものがあるのに、というものもそうだが……手紙の形式がちょっとおかしい。宛名と送り主が書いていないのである。『サネア嬢へ』『セルニオッドより』という文言が、手紙の前後にない。

 いくら私的な手紙で形式ばっていないからとはいえ、普通は書く。というかむしろ、ルイネオスのように、いかにもお手本通りの手紙を書こうとしたら、逆にしっかりと記載されるべきものであって、省略することはない。かつてのセルニオッド様が義務的に送ってくれた手紙にもちゃんと書かれていた。


 むしろこれは……手紙の真ん中だけを抜き取ったような……?

 封筒の方を確認してみるが、当然、わたし以外が開けたような形跡はない。キシュシー家と王城のメッセンジャーが勝手に開けた、ということもなさそうだ。


 もちろん、他人の手を経由しているので、絶対ということはないけれど、両家のメッセンジャーは信用足るものを雇っているし、貴族の手紙の封を開けていないように細工するのはなかなか手間がかかる。軽く紐を結んだだけだったり、どこにでも売っていて、簡単に手に入る蝋封のスタンプを使っている平民とはわけが違う。


 ということは……元々前後に何かまだ手紙があって、それをセルニオッド様の意志で封筒に入れず、そのまま宛名と送り主を書き忘れて送ってしまった、ということかしら? 可能性としてはまだこちらの方が高そうだけれど……そんなこと、ある?

 別に、慌てて返事を書かねばならない内容でもないし……。


 ……わたしへ手紙を送るの、面倒だとでも思ったのかしら。だって、普通だったら、封筒に入れる前に読み返して、不備がないか確認するものだもの。それを怠って、このような手紙が送られてきたのかしら。

 今回のセルニオッド様からしたら、あまり考えられないけれど……でも、そうとしか思えない。きっと何か事情があったのよ、と、プラスの意味を考えようとしても、一つも思い浮かばなかった。


 沈んだ気持ちのまま、わたしは、セルニオッド様の手紙を机の上に置き、お母様に、セルニオッド様へハンカチを届けにいくことの相談をしに行くのだった。

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