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わたくしレベルの悪役令嬢になれば婚約破棄フラグ管理は完璧ですわ!~今度はハッピーエンドを目指します~  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第一部

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 お店との都合を擦り合わせて数日後。

 わたしは白街へと来ていた。


 まさか、この年で一人で白街にこれるなんて。今まででは考えられない展開だ。

 いや、まあ、今日はシュテルビリーへと行けるだけ。他に寄り道はしない。お母さまとそういう約束だから、別のところへ、ふらっと行けるわけではないんだけど。仮にわたしがもう少し遊びたい、と言い出したところで、オリーテと護衛は言うことを聞かないだろう。


 わたし付きのメイドともなれば、わたしの言うことが優先されることはままあるけれど、基本は雇い主であるお母様やお父様の命令の方が絶対。わたしがもっと成長したり、お母様たちの言い分の方がおかしければ、彼女たちはわたしの味方になってくれるだろうけれど、ただの我がままであれば聞いてくれないに決まっている。


 オリーテがシュテルビリーの店の扉を開けると、「いらっしゃいませ~」と、アルテフが出迎えてくれた。今日の店番は彼らしい。――……いや、彼の母親らしき人もそばにいた。

 前回とは違い、わたしが何者か分かって、それでもなお、アルテフに丸投げしようとは思わなかったのだろう。というか、普通はそうだ。


 アルテフ・シュテルビリーは高等学院で会うのではなく、校外で話が展開していくキャラクター。ゆえに学生である必要もなく、わたしやフィトルーネよりも少し年上。サマリほどは離れていないけれど。

 それでも、今の彼は、まだまだ子供に分類される年齢。『アルコルズ・キス』より十年前だから……。今は七歳か八歳、というところだろう。

 ちょっとした店番ならまだしも、貴族相手の対応をやらせるには荷が重過ぎる。


「完成品のほうは、こちらになります」


 そう言って、彼の母親が見せてくれたのは、二枚の白いハンカチだった。

 細かなレースの縁取りだけでなく、布地にも刺繍が施されていた。ハンカチを二枚並べると、鳥が向かいあっているように見え、それだけでなく、一つの絵柄が完成される刺繍もある。

 どこからどう見ても、二枚で一セットのハンカチだ。

 おそろいだと分かるようなものを、と注文したのに、それ以上のものを作ってくれた。


「素晴らしいですわ」


 わたしは少し大げさに言って見せる。しかし、素直な感想でもあった。

 アルテフが作る、とは言っていたけれど、こんなにもすごいものを作ることができるなんて。


 もう一つの世界で、アルテフが作った、という体のグッズが売られることもあったけれど、所詮は機械による既製品。本当の意味で彼が作った作品を、わたしは今まで見たことがなかったのだ。

 しかし、実際に見れば分かる。彼の一品は、機械によってつくられたものよりもずっとすごい。

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