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わたくしレベルの悪役令嬢になれば婚約破棄フラグ管理は完璧ですわ!~今度はハッピーエンドを目指します~  作者: ゴルゴンゾーラ三国
第一部

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 別に焦らなくたって、アルテフは絶対本気で言っていない。

 現に、威嚇するようなセルニオッド様に対して、アルテフは、にこにこと余裕そうに笑っている。完全に、外野として楽しんでいる目だ、あれは。


 それにしても――ここまで分かりやすく牽制しているとなると、ある程度、セルニオッド様からの好感度は高いとみていいのかしら。元より、過去、わたしがやり直してきた中のセルニオッド様に比べたら、随分と対応が柔らかくて、親密度が上がっているように見える。


 油断は禁物だけれど、幼少期でここまで仲良くなれたのなら……他の攻略対象へと下手に接するのは悪手かしら。


 どの攻略対象のルートでも、サネア・キシュシーは悪役として登場した。そして、退場の仕方は、九割方が死亡として処理される。だからこそ、わたしとしては全てのキャラに、まんべんなく好印象を与えておきたい。別に、男女の情はいらないし、必要以上に深く仲が良くなる必要もない。


 死にかけたときに、助けようと手を伸ばしてくれる、その程度の関係性があればいいのだ。悪役にならないよう心掛けても、なぜか死亡フラグはそこかしこに転がっているので、ただ悪くないことを示すのではなく、そこからプラスの感情を持ってもらうように動かねばならない。


 そもそも。わたしの目的は、ただ死を回避するだけではないのだ。その先にある、無事に結婚し、子供を産み、子供ないし孫に囲まれ惜しまれて老衰で穏やかな死を迎えること。


 なので、下手にセルニオッド様以外の男と親しくなるのも良くない。

 王族と婚約している令嬢を略奪した、なんて話になったら、その先にわたしの求める幸せがあるとは思えない。愛する人と結ばれるのが目的なら話は別だけど、むしろ、そこはスタートライン。

 だから、婚約を破棄されず、無事に子を成す程度にセルニオッド様との関係を築き、老婆になるまで生き延びるためにあがいている。


 今までは、セルニオッド様の気を引くのが難しく、同時に、生き延びることもまた、難しかった。

 でも、今回は、既にセルニオッド様の関心は、ある程度わたしに向いている。


 そこから更にアルテフへの対策が必要かと言えば――どうなのだろう。


 幼少期のアルテフと接するチャンスは、何度も繰り返した行き来の中でこれが初めて。この機会をどう生かすべきか……。

 もしも、今回のフィトルーネがアルテフに恋をしたのなら、アルテフに対して何かしらのアクションを起こしておいた方が、生き延びるためにはいいのはそうなんだけど……。


 セルニオッド様の気を引くのと同じくらい、フィトルーネが毎回誰に恋をするのかを予測するのは難しいのだ。


 恐ろしいことに――フィトルーネは、毎回、セルニオッド様を恋い慕うわけではない。


 わたしの生存を難しくしているのは、この二点に尽きる。

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